投機筋の買い越し枚数が高水準まで増加している点には要警戒

 部分的な下落要因が存在するものの、全体的には複数の上昇要因が存在し、その結果、金価格は高値圏で推移している、と言えそうです。このような状況の中、今後の金価格の動向を考える上で、注意すべき点があります。投機筋の動向です。

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出所:CFTC(米商品先物取引委員会)のデータより筆者作成

 

 NY金先物市場の投機筋の買い越し幅(買い枚数-売り枚数)は、上図のとおり2007年以降の最高水準に達しています。10月1日(火)時点で190,811枚の買い越しです。特に2019年5月以降、金価格が現在の歴史的水準まで上昇する過程で、買い越し枚数の増加が目立っていました。

 また、「リーマン・ショックで激震!4年間の「金狂宴」の背景は?」で述べたとおり、リーマン・ショック後に米国で行われた金融緩和(QE1~QE3)の間、ドル安が進み、金が代替通貨として注目をあつめる傾向が強まり(4つの金価格の上昇要因の中の<4>)、金価格は1トロイオンス1,900ドルという史上最高値をつけました。

 その歴史的な高値に達した時の投機筋の買い越し幅はおよそ20万枚でした。今と同じ水準です。2007年以降の傾向は、20万枚を超えてくると、買い越し幅の増加は止まる、つまり投機筋の買い圧力が限界に達する可能性を示唆しています。

 とはいえ、買い越し枚数が過去の傾向における高水準だからといって、すぐに投機筋が買い越し枚数を減少させる(買い枚数を減らす、売り枚数を増やす、あるいはその両方)とは限りません。複数の懸念が発生している状況において、この20万枚の水準を維持することも考えられます。

 また、今週火曜日に、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会での発言が予定されています。トランプ米大統領の強い“利下げ圧力”に屈するように、FRBが今後も利下げを行うことが示唆され、かつその理由が、米国経済が弱含んでいるため、などという発言がなされれば、利下げの肯定・示唆が、先述の4つの金価格の上昇要因である④代替通貨として注目があつまる、そして米国経済の弱含みが(3)代替資産の需要を喚起するとの理由から、短期的に価格上昇がみられる可能性があります。

 例えば、上記の状況になれば、一時的に直近高値、NY金は1,560ドル近辺(9月4日の水準)、東京金は5,277円近辺(9月5日の水準)を目指す展開になると考えています。