海外は1,500ドル近辺、国内は5,000円近辺、引き続き歴史的な高値圏で金価格は推移

 上述のとおり、引き続き、金価格は歴史的な高値圏で推移しています。国際的な金価格の指標であるニューヨーク(以下NY)の金先物市場では1トロイオンスあたり1,500ドル近辺、東京の金先物市場では1グラムあたり5,000円近辺で推移しています。

 NY市場は6年数カ月ぶり、東京市場は上場(1983年3月)以来の高値水準にあたります。

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)、TOCOM(東京商品取引所)のデータをもとに筆者作成

 

 金の価格変動の要因としては、下記図のように、
(1)有事ムードが強まる
(2)中央銀行の金保有高増加
(3)代替資産に注目があつまる
(4)代替通貨に注目が集まる

 と、大きく4つの原因があると考えています。

 そして、足元の歴史的な高値圏での推移は、金価格の上昇要因のうち、(1)有事ムードが強まる、(3)代替資産に注目があつまる、においてその傾向が強まっているためだと考えられます。

出所:筆者作成

 特に先週発生した材料では、(1)有事ムードが強まる、について、北朝鮮と米国の非核化に向けた協議が決裂したこと、米国と欧州の航空機をめぐる貿易問題が報復関税を課す事態に発展したこと、香港でのデモにおいて覆面禁止措置が発動、実弾で撃たれて負傷者が出るなど激化したこと、(3)代替資産に注目があつまる、について、米中ともに先月の景況感を示す経済指標が悪化を示したこと、などがあげられます。

 部分的には、中国が米国産の農産物を輸入する話が持ち上がり、米中貿易戦争が沈静化する期待が高まったりしているものの、全体的には、懸念の強まりが複数の場所・統計で確認されているため、有事や代替資産という複数の金相場に深く関わる材料が、金価格を歴史的な高値にとどめているのだと思います。