金関連のセミナーは盛況。目的を持って金投資を行うことが重要

 10月5日(土)に、楽天証券サービス開始20周年記念セミナー会場内で行われた、ミニセミナー「金投資のいろは」で使用した資料はこちらよりご覧いただくことができます。※PDFが開きます。

立ち見も大勢。満員御礼のセミナー会場。集まったお客様は、著者の解説を熱心に聞き入っておられました

 セミナー会場に展示をした金塊(ラージバー)は時価およそ6,200万円。来場者の皆様に触れていただき、本物の金の輝きと重さを体感していただきました(写真には写っていませんが、筆者の右手には地金を警備する専門の警備員がいます)。

2019年10月5日、楽天証券サービス開始20周年記念セミナー会場内ブースにて
重さ約12キロ!両手でないと持ち上げられない重量感!

 筆者の背面に掲示されているグラフのとおり、金価格は歴史的な高値水準まで上昇しています。このためか、ミニセミナー会場で行った「金投資のいろは」のセミナーに、筆者の想像をはるかに超えるたくさんのお客様が集まりました。

 ミニセミナーの最中、個人投資家の皆様の真剣なまなざしから、国内外の株式や投資信託を中心に保有されている投資資産の中に、金を加えてみてはどうか? と強くお考えになられていると感じました。

 セミナー資料スライド16にも記載したとおり、短期売買も長期保有も両方できるのが、金の魅力の一つだと筆者は思います。

 

 また、金利がつかない、配当がない金を、あえて保有することについて、分散投資のため、心のよりどころ、税金対策など、さまざまな理由が挙げられます。あらかじめ(この点が重要)、金を保有する動機を明確にし、初志貫徹を心掛け、金を投資対象として有効活用していただくのがよいと筆者は思います。

海外は1,500ドル近辺、国内は5,000円近辺、引き続き歴史的な高値圏で金価格は推移

 上述のとおり、引き続き、金価格は歴史的な高値圏で推移しています。国際的な金価格の指標であるニューヨーク(以下NY)の金先物市場では1トロイオンスあたり1,500ドル近辺、東京の金先物市場では1グラムあたり5,000円近辺で推移しています。

 NY市場は6年数カ月ぶり、東京市場は上場(1983年3月)以来の高値水準にあたります。

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)、TOCOM(東京商品取引所)のデータをもとに筆者作成

 

 金の価格変動の要因としては、下記図のように、
(1)有事ムードが強まる
(2)中央銀行の金保有高増加
(3)代替資産に注目があつまる
(4)代替通貨に注目が集まる

 と、大きく4つの原因があると考えています。

 そして、足元の歴史的な高値圏での推移は、金価格の上昇要因のうち、(1)有事ムードが強まる、(3)代替資産に注目があつまる、においてその傾向が強まっているためだと考えられます。

出所:筆者作成

 特に先週発生した材料では、(1)有事ムードが強まる、について、北朝鮮と米国の非核化に向けた協議が決裂したこと、米国と欧州の航空機をめぐる貿易問題が報復関税を課す事態に発展したこと、香港でのデモにおいて覆面禁止措置が発動、実弾で撃たれて負傷者が出るなど激化したこと、(3)代替資産に注目があつまる、について、米中ともに先月の景況感を示す経済指標が悪化を示したこと、などがあげられます。

 部分的には、中国が米国産の農産物を輸入する話が持ち上がり、米中貿易戦争が沈静化する期待が高まったりしているものの、全体的には、懸念の強まりが複数の場所・統計で確認されているため、有事や代替資産という複数の金相場に深く関わる材料が、金価格を歴史的な高値にとどめているのだと思います。

投機筋の買い越し枚数が高水準まで増加している点には要警戒

 部分的な下落要因が存在するものの、全体的には複数の上昇要因が存在し、その結果、金価格は高値圏で推移している、と言えそうです。このような状況の中、今後の金価格の動向を考える上で、注意すべき点があります。投機筋の動向です。

単位:枚
出所:CFTC(米商品先物取引委員会)のデータより筆者作成

 

 NY金先物市場の投機筋の買い越し幅(買い枚数-売り枚数)は、上図のとおり2007年以降の最高水準に達しています。10月1日(火)時点で190,811枚の買い越しです。特に2019年5月以降、金価格が現在の歴史的水準まで上昇する過程で、買い越し枚数の増加が目立っていました。

 また、「リーマン・ショックで激震!4年間の「金狂宴」の背景は?」で述べたとおり、リーマン・ショック後に米国で行われた金融緩和(QE1~QE3)の間、ドル安が進み、金が代替通貨として注目をあつめる傾向が強まり(4つの金価格の上昇要因の中の<4>)、金価格は1トロイオンス1,900ドルという史上最高値をつけました。

 その歴史的な高値に達した時の投機筋の買い越し幅はおよそ20万枚でした。今と同じ水準です。2007年以降の傾向は、20万枚を超えてくると、買い越し幅の増加は止まる、つまり投機筋の買い圧力が限界に達する可能性を示唆しています。

 とはいえ、買い越し枚数が過去の傾向における高水準だからといって、すぐに投機筋が買い越し枚数を減少させる(買い枚数を減らす、売り枚数を増やす、あるいはその両方)とは限りません。複数の懸念が発生している状況において、この20万枚の水準を維持することも考えられます。

 また、今週火曜日に、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会での発言が予定されています。トランプ米大統領の強い“利下げ圧力”に屈するように、FRBが今後も利下げを行うことが示唆され、かつその理由が、米国経済が弱含んでいるため、などという発言がなされれば、利下げの肯定・示唆が、先述の4つの金価格の上昇要因である④代替通貨として注目があつまる、そして米国経済の弱含みが(3)代替資産の需要を喚起するとの理由から、短期的に価格上昇がみられる可能性があります。

 例えば、上記の状況になれば、一時的に直近高値、NY金は1,560ドル近辺(9月4日の水準)、東京金は5,277円近辺(9月5日の水準)を目指す展開になると考えています。