認知症の可能性に備える

 親御さんが、「後期高齢期」にさしかかってきた場合、認知症の発症・進行を対処すべきリスクとして意識する必要がある。

 高齢顧客の認知症が進行した場合に、金融機関は家族に後見人をつけるように要請する場合があるが、言われるままに家庭裁判所に後見人の選任を申し立てる前に、踏みとどまってよく考えてみるべきだ。

 後見人として子供が自分を推薦して申し立てを行っても、弁護士や司法書士などの職業後見人が選任される場合が少なくない。こうした後見人が付くと、親の財産の利用が著しく不自由になることがある。また、家庭裁判所が決める後見人への報酬が高いことも問題だ。報酬は被後見者の金融資産(主に預金)の水準によって増減されるが、年間24万円が最低水準だ。はっきり言って何とももったいない。

 職業後見人がつく事態を防ぐには、子供が親の金融取引等の代理を行う財産管理等委任契約と、必要が生じたときには子供を後見人として任意後見に移行する契約(移行型の任意後見契約)をセットにして、公証役場に持って行って有効な契約としておくといい。

 これで完璧と言い切れない面もあるのだが、いきなり職業後見人が付く事態を予防することができる。

 認知症が進行した場合に備える対策としては、大きくは、任意後見と家族信託の2つの対策がある。本稿では詳述しないが、親御さんが高齢な読者は調べてみて欲しい。「任意後見」、「財産管理等委任契約」、「家族信託」などが検索用のキーワード候補だ。