人間のリスクへの対策

 親御さんが不適切なセールスを受けていること、結果として不適切な商品を持っていることに納得してくれたとしよう。

 ここまでが大変なのだが、さらにこの先もう一山ある。それは、取引金融機関との関係を変えることに対して親御さんが動いてくれるかどうかだ。

 筆者の本音を言うなら、不適切な商品を売った金融機関とはすっかり縁を切って、資産を別の金融機関に移すことが望ましい。これまでの担当者との関係も断つべきだ。

 しかし、そこまでできないことが多いのも現実だ。

 こうした場合、例えば母親の問題であれば、母親とともに取引金融機関を訪ねて「母はもう高齢なので、リスクを取った商品の勧誘はいりません。また、現在持っている商品は手数料が高過ぎて不適切であると判断しています。ついては、貴社にお預かりいただいている資産は、全て個人向け国債の変動金利型10年満期にいたします。また、今後一切の営業勧誘を行わないことをお約束していただきたいので、よろしくお願いいたします」とでも述べて、これが本人の意思でもあることを母親からも言ってもらおう。

 この際には、取引相手の担当者1人だけではなく、担当者の上司にも同席を求めるといい。

 筆者の母親の口座は、幸いひどいことにはなっていなかったが、上記は、母親の取引口座があった金融機関に筆者と母親が行って、先方に述べた内容とほぼ同じだ。その後2年ほど経過したが、母は勧誘を受けていない。

 もっとも、これでずっと安心と考えていいかというと、そうではない。金融機関にあっては、担当者もその上司も転勤して交代することがあるので、親が将来新たな勧誘に晒されるリスクはなくなっていないと考えて、時々チェックを入れることが望ましい。