3.2019年11月にグーグルの「Stadia」サービス開始

 2019年11月にグーグルはクラウドゲームサービス「Stadia(ステイディア)」を開始する予定です。ゲームソフトを手元のゲーム機、パソコン、スマートフォンにダウンロードしたり、ゲーム機にゲームカートリッジを装着して遊ぶのではなく、インターネット上のサーバーからゲームソフトを流しっぱなしにして遊びます(ストリーミング)。インターネットに接続できる手元のパソコン、スマートフォン、テレビでゲームソフトが遊べるようになります。

 まず、2019年11月からアメリカ、ヨーロッパの14カ国でサービスが始まります。次いで、2020年から日本を含むその他の地域へサービスエリアが拡大する予定です。

 サービス形態には2通りあり、2019年11月から始まる「Stadia Pro」は、月額9.99ドル(約1,070円)で加入でき、毎月数タイトルが無料で遊べます。それ以外のタイトルは購入することになります(価格は未公表)。画質は4K、音質は5.1サラウンド、フレームレートは60fpsなので、PS4 Pro、XboxOneと同等の性能になります。

 また、2020年から始まる「Stadia Base」は月額無料で、ゲームは購入します。画質は1,080p、サウンドはステレオ、フレームレートは60fpsなので、Stadia Proに比べ劣ります。

 6月7日から「Stadia Founder's Edition」の事前予約が開始されています。Stadia Pro3カ月分に専用コントローラーなどが付いて129ドル(約1万3,800円)です。専用コントローラーだけ購入することも出来ます(69ドル、約7,400円)。

 ソフトは、30タイトル以上の配信が決まっています。日本からは、スクウェア・エニックス・ホールディングス、コーエーテクモホールディングス、バンダイナムコホールディングスなどが参加します。

 クラウドゲームの回線スピードについては、グーグルでは、最高のゲームパフォーマンスを得るためには、通信速度35Mbps、最低でも10Mbpsが必要になるとしています。このスピードなら、4Gや光回線で十分です。

 また、クラウドゲームでは「遅延」の問題が重要になります。従来のクラウドゲームでは、ゲームプレイヤーの動作と画面の動きにズレが生じる遅延が発生するため、特にアクションゲーム、オンラインゲームでは難点がありました。

 これに対してグーグルでは、グーグルは巨大な高速グローバルネットワークを保有しているため(実際にYouTubeの動画を全世界に配信するために、巨大なネットワークを持っている)、ゲームソフトが格納されているサーバーとユーザーとの間で、他のネットワークを経由することなく直接接続できることと、専用コントローラーから最寄りのゲームサーバーを呼び出すことによって、遅延を最小限に出来るとしています。他のクラウドゲームのネットワークでは、ネットワークの規模がグーグルよりも小さいため、ユーザーからゲームサーバーまでに他のネットワークを経由する場合があり、それが遅延の原因になっているとしています。

 このグーグルの主張に対しては、ゲーム会社によって異論もあり、実際にサービスが開始され、数百万人規模でユーザーがStadiaを試さなければはっきりしたことは言えないと思われます。

 ただし、長期的な技術トレンドを考えると、クラウドゲームはゲームの大きな流れになると思われます。Stadiaの今後は、ソニーや任天堂の家庭用ゲーム事業に対して、特に高性能ゲーム機にこだわり、Stadiaの普及期とPS5の普及期がほぼ重なることになるソニーのゲームビジネスに対して、強い影響を与えると思われます。この点については、ソニーとマイクロソフトの間で進行中のクラウドゲームとAI(人工知能)に関する提携交渉の中身が注目されます。

 任天堂に対しては、任天堂の次世代機が発売されるのは当分先(4~5年後?)になると思われるため、Stadiaを研究する時間が十分あり、任天堂としてクラウドゲームに対する姿勢を作る時間の余裕があると思われます。「マリオ」などの強力なコンテンツを持っていることも任天堂の強みです。

 また、バンダイナムコホールディングスやカプコンのようなゲームソフト専業にとっては、ゲームソフトを売るルート(それも大口になるかもしれないルート)が増えることになり、事業機会の拡大に繋がると思われます。

 Stadiaの成否に注目したいと思います。

4.5Gとゲームの関わり

 2020年から各国で本格化する5G(第5世代移動通信)は、スマートフォンだけでなく、様々な分野での応用が期待されています。ゲームへの応用はその中でも重要なものです。高速大容量通信が可能で、遅延がほとんどなく、大人数の同時多接続ができる5Gの特性は、オンラインゲーム、クラウドゲームに適していると考えられます。