スターアジアによる敵対的買収戦略の法的問題

なぜスターアジアはもっと多くの投資口を取得しなかったのか

 敵対的買収を行うのであれば、スターアジアは手っ取り早くTOB(株式公開買い付け)を仕掛けるなどして、さくらの投資口を50%以上取得してしまえばよいのではないかと考える方も多いでしょう。しかし、J-REITの場合、TOBができない事情があります。法人税の制度によるものです。

 J-REITが高分配金を維持できる要因の一つに、法人税算出の際、分配金を損金に算入できることが挙げられます。一定の要件を満たすと、分配金の損金算入によって法人税が減免されるため、高分配金が維持できるというわけなのです(租税特別措置法67条の15第1項)。

 この一定要件は、次のとおりです。

・配当可能利益の90%超を配当していること(支払配当要件)
・他社株式の50%以上を保有していないこと(会社支配禁止要件)
・筆頭株主の投資口保有比率が50%以下であること(非同族会社要件)

 TOBによって、スターアジアがさくらの投資口を50%以上取得してしまうと、スターアジアは法人税減免されず、高分配金を維持できなくなります。また、さくらも同様に要件を喪失し、法人税は減免されません。こうなると両方の投資法人、ひいては投資主にとってマイナスです。

 このため、J-REITの場合はTOB(株式公開買い付け)という方法は取れないということになります。これは通常の事業会社と違う点です。