「株価操作・操縦」について、ご存知ですか?
株価操作はやってはいけない違法なことです。では、具体的にどういう行為が該当するのでしょうか? クイズ形式で3人のケースを例に、ファイナンスMBA弁護士が過去の刑事事件も交えながら、わかりやすく説明します。
ー前提ー3人の個人投資家は上場しているA社の株式を保有しています。なお、A社株は株価が低迷していて、各自“なんとかA社株を高値で売却して儲けたい!”と考えています。(※3人は共犯関係にはない)
罪1:風説の流布(金融商品取引法158条)
罪2:仮装取引、馴合取引(金融商品取引法159条1項)
罪3:変動操作取引(金融商品取引法159条2項)
ケース(1)有名ブロガーX男の株価操作は?
X男は、わりと有名な個人投資家で、自分のブログで投資情報を配信していました。何ら合理的な根拠がないにもかかわらず「A社株は、空売りの踏上げ相場が形成され、株価が上昇することが予測されるので、A社株の保有は継続するべき!」とブログに書き込みました。
X男の書き込みを見たフォロアーの投資家たちは、A社株の株価が上昇すると誤解しA社株の保有を続け、A社株を買い付けするなどしたことから、A社株の株価は上昇しました。そこでXは保有していたA社株を全て売却し、高値で売り抜けることに成功しました。
ケース(2)サラリーマンY氏の株価操作は?
Y氏は、A社株の株価を上昇させることを目的に3つの取引を行いました。まずは、売り注文が出ているA社株に対して高値の買い注文を連続して発注し売り注文を約定させることにより、A社の株価を引き上げました。
次に、A社株の現在値より下値に大量の買い注文を発注するとともに実際に買い付けも行い、株価が下落しないようにしました。次に取引終了時刻の直前に(例えば14時59分)高値での買い注文を発注して約定させ、A社株の終値を上昇させました。
さらに、画面上に表示されているA社株の価格帯に約定させる意思のない大量の注文を発注し株価を上昇させました。
Y氏は上記の方法によりA社株の株価を上昇させた上で保有していたA社株を全て売却し、高値で売り抜けることに成功しました。
ケース(3)美人デイトレーダーZ子の株価操作は?
Z子は、A社株の株価を上昇させることを目的に、2つの取引を行いました。まずは、寄り付き前に(株取引開始時間前の例えば8時55分など)A社株につき大量の成行買い注文を出しました。
次に、取引時間内において、最良買気配値近辺に大量の買いの指値注文を出し、最良買気配値から離された下値に大量の買いの指値注文を出しました。
上記の方法によりA社株の株価を上昇させた上で、保有していたA社株を全て売却し高値で売り抜けることに成功しました。
そもそも「株価操作」とは、なんだろう?
市場において相場を人為的に変動させ、その相場をあたかも自然の需給によって形成されたものであるかのように装って、他人を誤認させ、相場の変動を利用して自己の利益を図るものです。
このような「相場操縦取引」は、相場に不当な影響を与え、公正な相場における価格形成を阻害することから、金融商品取引法で禁止されています。
そして違反者には、証券取引委員会による検察庁への刑事告発(10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金)や課徴金納付命令の勧告が行われます。