アンリツ
1.2020年3月期1Qは、11%増収、営業利益65%営業増益
アンリツの2020年3月期1Qは、売上高232億3,600万円(前年比10.8%増)、営業利益26億9,500万円(同65.3%増)と大幅増益になりました。
セグメント別に見ると、中核事業であるT&M(計測)事業が、売上高173億1,500万円(前年比20.3%増)、営業利益27億6,100万円(同82.1%増)と大幅増益になりました。2018年3月期4Q(2018年1-3月期)から5G用測定器の受注を得ていますが、T&M事業の受注高が5G用測定器受注をけん引役として、前3Q179億8,900万円(前年比34.1%増)、前4Q188億1,300万円(同13.0%増)、今1Q197億5,100万円(同35.5%増)と増加していることが好業績の要因です(グラフ3)。ちなみに、T&M事業の今1Q受注高は会社側想定レンジの上限に近かったもようです。
5G用測定器の顧客の中身を見ると、前期までは5Gチップセットメーカー(チップセットは、5Gスマホに必要な5Gモデム、CPU等をモジュール化したもの。クアルコム、サムスン、メディアテックなど)と5Gスマホ端末メーカー(サムスン、ファーウェイなど)の両方が増えたもようですが、今1Qはスマホ端末メーカーが増えてきたようです。
一方、PQA事業(食品・薬品・化粧品産業向けX線異物検出機や、重量選別機など)は、売上高40億8,800万円(前年比16.5%減)、営業損失1億5,800万円(前年同期は1億5,000万円の黒字)と赤字転落しました。国内受注は順調でしたが、海外受注を大手客中心に絞ったため、PQA事業の受注高は53億3,000万円(前年比6.9%減)へ減少しました。売上高は機械メーカー経由の受注が増えたため納期が長くなり、そのため一時的に減収率が大きくなり営業赤字となりました。ただし、通期では黒字になる見通しです。
表4 アンリツの業績
グラフ2 アンリツ:T&M(計測)事業の業績
グラフ3 アンリツ:T&M(計測)事業の受注高と受注残高
2.会社側は2020年3月期業績予想を維持したが、上方修正の可能性がある
会社側では今期2020年3月期業績を売上高1,020億円(前年比2.3%増)、営業利益100億円(同11.1%減)と予想しており、今1Qの好調な決算にもかかわらず期初会社予想を維持しました。これは今2Q以降の業績に米中貿易摩擦等の不透明要因があること、今期は研究開発費を増やすため(研究開発費は2019年3月期120億円→2020年3月期計画133億円)、これが利益圧迫要因になることなどによります。
ただし、5G用測定器の受注は今後も増加すると予想されます。T&M事業のモバイル向けの中身を受注ベースで見ると(前期のT&M事業売上高の53%がモバイル向け)、今1Qは5G用測定器が60%以上、4G用が40%以下と、既に5G用が全体をけん引するようになっています。そのため、これから5G用の受注増加の寄与が本格的に業績に現れると予想されます。
また、今期に受注している5G用測定器は、5Gチップセットや5Gスマホ端末の開発用測定器が多くなっていますが、来期2021年3月期以降はこれに加えて5Gスマホの生産ラインで使う量産用測定器が増え、出荷台数が増えると予想されます。研究開発費の負担も来期は軽減されると思われます。
中長期的には大手通信会社の5Gだけでなく、地方自治体や企業が運営する「ローカル5G」が測定器需要に与える影響にも注目できます。
このような見方から、楽天証券では2020年3月期を売上高1,100億円(前年比10.4%増)、営業利益120億円(同6.7%増)、2021年3月期を売上高1,170億円(同6.4%増)、営業利益160億円(同33.3%増)と予想します。
3.引き続き投資妙味を感じる
今後6~12カ月間の目標株価を2,600円とします。前回の2,500円からやや引き上げます。2021年3月期の楽天証券予想EPS87.4円に想定PER30倍を当てはめました。楽天証券予想ベースの今期PERが約30倍なので、この評価が続くと想定しました。
会社側の見方では、5G用測定器の需要のピークは2022~2023年(2023年3月期~2024年3月期)なので、まだ投資する余地があると思われます。引き続き投資妙味を感じます。
表5 アンリツ:セグメント別業績
本レポートに掲載した銘柄:東京エレクトロン(8035)、アンリツ(6754)