2.今下期から緩やかに業績回復へ、本格回復は来期からか

 今1Q決算時に、会社側は2020年3月期通期業績予想を維持しました。会社予想では、今上期売上高4,900億円(前年比29.1%減)、営業利益850億円(同51.5%減)、今下期売上高6,100億円(同3.9%増)、営業利益1,350億円(同0.1%減)となっています。今回の楽天証券予想も会社予想と同じ予想です。

 すなわち会社側は、今2Qに業績が底ばいした後、今下期から緩やかに回復に向かうと予想しています。要するに業績は今が底というのが会社側の見方です。

 また、会社側によれば、下期はロジックファウンドリ向け、ロジック向けが上期よりも伸びる見込みです。これは、TSMCの5ナノ本プラントの建設、インテルの最新鋭10ナノラインの構築と既存14ナノラインの増強などによるものと思われます。

 会社側による現時点での2019年暦年半導体前工程設備投資の伸び率予想は以下の通りです。

  • 前工程全体では、前年比15~20%減(2019年4月時点での予想も前年比15~20%減で同じ)
  • このうち、ロジック/ファウンドリは、前年比約35%増(同約25%増)
  • 不揮発性メモリ(NANDなど)は、前年比約60%減(同約50%減)
  • DRAMは、前年比約40%減(同約30%減)

 要するに、NAND、DRAM設備投資の予想以上の不振をロジックの予想以上の伸びで補うという見方です。NAND、DRAM設備投資の回復時期は、現時点では2020年に入ってからと予想されます。4月の会社予想では、NANDは在庫調整の進展で2019年後半から設備投資が回復し、DRAMも2020年初頭から設備投資が回復すると会社側は予想していましたが、遅れることになりそうです。

 ただし、日本の韓国向け輸出審査の厳格化と、韓国をホワイト国指定から除外することによって、今後韓国半導体メーカーの半導体生産が停滞する可能性があります。このため、DRAM、NANDの在庫調整が早く進んだり、韓国半導体メーカーが中国工場を増強するなどの新規投資が発生することによって、東京エレクトロンの予想よりも早くメモリ設備投資が再開される可能性もあります。

 前工程製造装置は受注→売上のリードタイムが約6カ月間なので、今下期にメモリ設備投資(半導体メーカーの製造装置の発注)が再開された場合、業績への寄与は来期に入ってからと予想されます。

3.業績本格回復は来期からか。目標株価を引き上げる

 今のロジック向け設備投資の増加が続き、2020年に入ってメモリ向け投資が再開されれば、東京エレクトロンの来期2021年3月期は、上期から業績回復、再成長が期待できると思われます。楽天証券では2021年3月期業績を、売上高1兆3,000億円(前年比18.2%増)、営業利益3,100億円(同40.9%増)と予想します(前回予想と同じ)。

 今後6~12カ月間の目標株価を2万6,000円とします。楽天証券の2021年3月期EPS予想1,477.7円に想定PER15~20倍を当てはめました。前回の2万2,000円から引き上げます。引き続き投資妙味を感じます。

グラフ1 東京エレクトロンの半導体・FPD製造装置販売高

単位:億円、四半期ベース
出所:会社資料より楽天証券作成