家計はリスクの見える化が必須。血縁支え合いに警鐘

 さて、これまで見てきたように、大きな政府で手厚い社会保障というよりは、小さな政府で自助努力というのが、現政権の方針のようです。

 私も自助努力が前提だとは思いますが、日本の法制や社会保障は未だに血縁が支え合うという発想が強く残っているので、老後の生活費の問題は、自分の家庭に留まるものではなくなる可能性があります。

 民法877条1項には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。生活保護の受給資格は、別途、生活保護法の定めがありますが、民法の条文に大きく影響を受けていますし、2013年および2018年の改正で、扶養義務の強化と生活保護基準の引き下げが行われました。

 自分の子供や配偶者に対する扶養義務に比べれば、親や兄弟姉妹への扶養義務は弱く、あくまでも社会的地位や収入等を勘案した上での余力の範囲ですが、毎月の仕送りも、長い目で積み重なると思いがけない金額になります。

 例えば、毎月5万円の仕送りでも10年で600万円、20年で1,200万円になります。馬鹿にできない金額ですが、扶養義務を求められた場合、国民年金(基礎年金)に上乗せする額としては、月5万円でも不足でしょう。その際は、不足している残りの数万円が生活保護費として支給されることになります。

 これまで、介護費や介護離職の問題は大きく報道されてきましたが、このままの年金制度が続く場合、親の生活費を工面した結果、自分の老後に必要な生活資金を貯め損ねたという家計が増えかねません。

 世知辛い話ですし、あまり考えたくない話題ではありますが、リスク管理の基本は想定外を減らすことにあります。

 年金問題で少しは、お金のことを話しやすくなった雰囲気があるかもしれません。自分の家計の収支やイベントを把握することも重要ですが、この機会に親の生活・財産状況をそれとなく確認してはいかがでしょうか。