政府の将来設計では語られない高齢者生活保護世帯

 7月に公表された『厚生労働白書』では、社会保障の現状を紹介する一環として高齢者生活保護世帯の言及がありますが、5月に公表された自由民主党政務調査会『人生100年時代戦略本部取りまとめ~人生100年時代の社会保障改革ビジョン~』や閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2019 ~「令和」新時代:「Society5.0」への挑戦~』(いわゆる骨太の方針)では高齢者生活保護世帯については述べられていませんでした。

 両資料の社会保障政策に共通している思想は、自助・共助・公助の役割分担を見直すことで、政府の役割を限定し、自助を基本としつつ、共助が担う範囲を増やすというものと言えそうです。 特に、『人生100年時代戦略本部取りまとめ』では、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」という原則が明確に打ち出されました。

 年金や老後の生活資金をリスクマネジメントの観点で分類すると、生活費は確実に発生するコストですし、最低限度の生活に必要な金額も見積もることができるので、コストはかかるけどリスクは小さいので、自助ということになります。

 一方、例えば、災害発生時の安否確認や避難をする際の声がけなどは、発生確率は低いですが、生死に関わりかねないので、大きなリスクは共助という分類に馴染むと思います。

 できれば、行政に委ねたいという気持ちはありますが、初動が肝心で、一分一秒を争う事態もありますから、やはり、まずは共助で支えて、避難先での食料や物資の支給、医療などのケアは公助という整理が合理的です。

 今後は高齢者向け医療サービスのあり方についても、議論が進みそうです。どうやって高齢者医療に掛かる行政コストを抑えていくのか、このままだと、社会保障費が青天井で増加していくので、踏み込んだ提案が出てくるかもしれません。