「追証」回避のための現物株売りは、「発生前の取引時間中」に

 これによって、「追証発生を回避するための現物株売り」というのが新たな選択肢に加わることになります。

 どういうことかと言うと、委託保証金として使われる保有株式は「代用評価額」として、実際の株式価値から割り引かれた金額になります。

 例えば、100万円分の保有株式に対して委託保証金の評価額は80万円で計算するといった具合です。日々変動する株価は不安定なため、現金と比べて保証金としての担保価値が下がるという考え方です。

 つまり、株式を委託保証金に使っている場合、売却して現金化すれば、割り引かれて評価されていた分だけ委託保証金が増えることになります。

 これまでは、「このままだと追証が発生しそう」といったタイミングで現物株を売却しても、受渡日がT+3だったために、追証解消期限(T+2)には間に合いませんでしたが、今後は受渡日がT+2となるため、間に合わせることが可能になります。

■図2:現物売却による委託保証金額(代用評価と現金評価)の変化のタイミング

※追証の発生は、取引時間終了後に確定。現物株売却による追証回避は、発生前の取引時間中に行う必要がある。

 もちろん、追証が発生(取引時間に確定)してから現物株を売っても追証は解消されませんし、追証解消のために建玉を返済して不足金が発生する際には、先ほどのように、返済と同じ日に売却した現物株の代金を不足金に充てることはできます。

 また、現物株売却による追証回避は、どちらかと言えばその場しのぎの対応の印象が強く、「明日には入金できる」、「間もなく他社から入庫した株券が委託保証金として反映される」といった場合には有効かもしれません。

 基本的には、委託保証金率を高めに維持したり、無理のない範囲で建玉を管理するなど、普段から追証の発生を防ぐことに注力する方が大事になります。