G20の注目点をおさらい

 今週末のG20 で世界中が注目しているのは、G20に合わせて開催予定の米中首脳会談で米中通商協議に何らかの進展があるかどうかという点です。

 米中首脳会談によって通商協議が合意に達するとの見方はほとんどないため、合意に達しなくてもマーケットに与える影響はほとんどありません。しかし、合意に達しなくても追加関税は先送りで、かつ、協議継続でもマーケットは歓迎する可能性があります、企業も個人も心理的に好転し、株の一段高が期待できる可能性があります。

 ただその場合に一つ気になるのは、企業行動や個人消費が心理的に改善すれば、FRB(米連邦準備制度理事会)としてはファンダメンタルの好転を見極めるために7月利下げを見送る可能性が考えられます。しかし、7月利下げが見送られた場合、7月の利下げ期待が高まっているだけに、マーケットは失望し、株は大幅に調整されるかもしれません。26日のパウエルFRB議長の利下げ観測牽制発言によって米株が調整したようなことが、大規模に起こるかもしれません。

 米株の大幅調整は、来年2020年の米大統領選を控えているトランプ大統領にとっては不本意な出来事です。トランプ氏としては、中国とは休戦状態にもっていき、株高はFRBの利下げによって演出するという思惑かもしれません。FRBに対する圧力がより強まっている現況を見ると、案外外れていないかもしれません。株が調整されれば、トランプ大統領のFRBに対する圧力は一層強まることが想像できます。

 トランプ大統領は、G20サミットに合わせて中国だけでなく、ロシアやサウジアラビア、トルコなど8カ国との首脳と会談する予定となっています。米韓とも南北朝鮮の国境近くで開催予定とのことであり、米朝首脳会談がサプライズとなるかもしれません。米政府筋は否定していますが、マーケットに臨むものとしては警戒しておく必要があります。 これ以外にも大阪G20の大舞台でトランプ大統領は次々とサプライズを起こし、見得を切るのでしょうか。

 G20を前にして国際政治状況が動いています。香港デモ、中朝首脳会談、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃、米軍無人偵察機撃墜、イラン制裁発動と関連性はないかもしれませんが、G20を前にして起こった出来事であり、国際政治力学の均衡を揺るがすきっかけになったかもしれない出来事です。金融市場はFRBの緩和姿勢によって債券高、株高の金融相場となっていますが、これらの相場は政治状況によって一変することは過去に何回も起こっています。G20を前にあまり慎重になる必要はないですが、留意しておく必要はあります。