5:成長率見通しが変わるのか

 成長率(GDP:国内総生産)見通しについては、特に注目しています。

 6月7日に発表された5月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が7.5万人と予想の18万人を大きく下回り、前月の22.4万人からも大きく減少しました。2月以来の10万人割れとなり、労働市場の頭打ち感が出始めています。

 一方で、14日に発表された5月の小売売上高は前月比+0.5%と3カ月連続のプラスとなりました。特に前月発表された4月分が▲0.2%が0.3%と上方修正されたのは予想外の強い数字でした。同日発表された5月の鉱工業生産指数も製造業部門も0.2%上昇し、今年初めてプラスとなりました。

 ところが、17日にニューヨーク連銀が公表した6月のNY州製造業業況指数は過去最大の落ち込みを記録し、前月の+17.8から▲8.6と2年半強ぶりの水準に下がりました。 

 このように今月に入っても強弱まちまちの数字が発表されており、このような経済環境の中でFRBはどのような景気認識を示すのか注目しています。世界経済全体が減速する中で、米国だけは強さを保っていましたが、その一人勝ちが変わるのかどうかに注目です。

 下表はFRBの昨年9月時点からの成長率見通しですが、2019年見通しは毎回下方修正されています。今回、現在の強弱まちまちの経済指標が発表される中で下方修正されるのかどうかに注目です。参考までにECB(欧州中央銀行)の2019年経済見通しは、下表の通り6月時点で上方修正しています。

 前回の悲観予想の反動で上方修正したとの見方もありますが、やや強気の気がします。

 米国の直近1-3月期GDP(実質年率)は3.1%です。また、アトランタ連銀が公表する4-6月期GDP予想は+2.0%です(6月18日時点、前回6月14日+2.1%から減速)、ニューヨーク連銀が予想する4-6月期GDP予想は+1.4%です(6月14日時点、前回6月7日+1.0%から上昇)。

 これら連銀のGDP予想は、直近の経済指標を反映した速報値としてマーケットは注目しています。両連銀の予想時点は異なりますが、GDPの方向や水準は参考になります。

 ニューヨーク連銀の予想は6月17日の大きく落ち込んだNY州製造業業況指数はまだ反映されていないようです。

FRB成長率見通し(%、中間予想値、2019年3月時点)

 

 

 これまでマーケットを様子見させていた二つの材料のうち、FRBの利下げについては数時間後にはっきりします。もう一つの材料である米中通商協議の合意は、米中首脳会談開催表明によって少しは払拭されました。

 しかし、米中首脳会談が行なわれても通商協議の合意までに至らず、今後、通商協議は両首脳が中心になって行なうとのメッセージだけでは、マーケットは失望する可能性があります。通商協議の動向は依然不透明のままとなり、投資家の足枷になる状態は続くことになります。

 19日に来年の米大統領選挙に再選を目指し立候補を表明したトランプ大統領が、G20では舞台作りだけで終わるのかどうか、注目です。