昨2018年6月のOPEC総会同様、限定的な増産を可能にした減産継続で決定する!?

 上記4つの選択肢の中で、どれが最も可能性が高いのでしょうか? 6月9日の週に起きた出来事や発表されたデータを参照すると、筆者は「減産緩和」であると考えています。

図:6月9日の週に起きた出来事・発表された統計から推測されるOPEC総会での決定事項 

出所:筆者作成

 上記の流れで、昨2018年6月の総会と同様、限定的な増産実施を含んだ「減産継続」となった場合、原油相場も昨年同様、目先、上昇することが予想されます。

 ただし、以下のように、減産順守率が下落した時、同時に米国の原油在庫が増加した場合、原油相場が下落しやすい傾向がある点に注意が必要です。

図:米国の原油在庫(左軸)の原油価格(右軸)推移

出所:EIA(米エネルギー省)、OPECおよびCMEのデータをもとに筆者作成

 昨2018年6月のOPEC総会で、減産緩和(減産は継続するが、減産順守率が100%を下回らない範囲で増産ができるようにすること)が決定されました。当該総会の前月(2018年5月)の減産順守率は147%であったため、100%を上回った47%分にあたるおよそ日量85万バレルを増産できるようになりました。

図:減産順守率の推移(OPECプラス合計)

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

 上図のとおり、2018年は6月の総会前をピークとして年末にかけて減産順守率が低下しました(2018年11月は98%、12月は91%と、2019年1月からの現行の減産実施のためにサウジやロシアが “駆け込み増産”を行ったため、100%を下回る減産非順守となった)。

 減産順守率が下落している=減産の効果が弱まっているとき、週次ベースで公表される米国の原油在庫が予想を上回って増加した、あるいは前週を上回ったなどとなると、原油市場はその在庫の増加を嫌気して下落する場合があります。

 特に、今年5月から6月にかけて、米国の原油在庫が増加した場合に原油相場が下落するケースが目立っています。仮に来週の総会で減産緩和が合意となり、減産順守率が下落すると、もともと今年は米国の原油在庫の増減が意識されやすい状況にあるため、若干の在庫の増加でも原油相場が短期的に下落する可能性があります。

 今回は、ホルムズ海峡の事件に加え、先週公表されたさまざまなデータを参照し、来週のOPEC総会の決定事項を考察しました。中東情勢という目立つ材料だけでなく、各種データ、そして特にこの1週間は、OPEC総会を控え、関連する要人の発言に注意が必要だと思います。

 

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