6月10日~14日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は下落。米国の利下げ観測を背景とした投資家心理改善により、WTI期近7月限は一時54.84ドルまで上昇する場面も見られた。しかし、米中問題や需給緩和見通しを受けて反落。その後は決め手難から方向感を欠いた展開が続いている。

 米国の原油需給は弱い。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は前週に続いて予想外の増加となった。在庫は約2年ぶりの高水準にまで積み上がっている。現状の生産や輸出入、消費動向からは余剰感が大きく後退する状況にはなく、需給緩和状態はしばらく続く公算大。米国の在庫ダブつきに関しては市場に織り込んでいる感はあるが、それでも市場は売りで反応した。しかし、米国とイランの軍事衝突の可能性がこの弱気を打ち消した。原油輸送の要衝であるイラン沖合のホルムズ海峡付近で、日本と台湾のタンカー2隻が攻撃を受けた。輸送していたのはエタノールとナフサだが、世界の海上輸送される原油の4割がこの海峡を通るため、原油輸送が停滞することで需給が引き締まるとの見方が広がった。イラン政府は関与を否定しているが、米政府はイランに責任があるとの判断を示しており、両国の軍事衝突への警戒がさらに強まった。米国の原油需給に関してはベアであると見る向きが多いが、中東の地政学的リスクに関しては先読みし難く、不透明感をより強める要因となっている。

 石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国の協調減産が継続するか否かについても不透明な状況にある。市場均衡、油価下落回避のためにも、次回総会では減産継続が協議される可能性が高い。サウジアラビアはすでに減産継続を支持する方針を示している。しかし、非加盟国盟主ロシアは協調減産継続決定に慎重姿勢で、これに対しサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、まだ方針を決定していないのはロシアだけだと指摘。ロシアのノバク・エネルギー相は、過剰生産による原油価格急落リスクがあるとしたうえで、6月の情勢を見極める必要があるとしている。ロシアが協議を長引かせるのは今に始まったことではないが、両産油大国に温度差があり、どのような結果になるのか判断が難しくなっている。また、イラン産原油の全面禁輸の影響で、5月のイランの産油量が前月から1割近く減少している。減産が免除されている同国の生産減により必然的にOPECらの生産水準は低下しており、減産を継続するにしても減産幅が現状のままでいいのか協議する必要があるだろう。OPECプラスの動向には引き続き注意が必要である。なお、今月最終週に開催されるG20関連の会合で、両石油相の話し合いが行われる模様。