6月に注目したい新興株の動き

 米中の通商摩擦問題がどんな展開になるか? 次第で、現時点では「分かりません」としか言えません。この不透明感が断定的なポジション構築を皆無にさせている理由で、市場の中も、投機筋の短期売買で溢れかえっている印象。貿易摩擦をネタにした短期のポジションだけ積まれているため、緩和なら買戻しで上昇、激化なら下落。当面はこの繰り返しでしょう。

 6月最大の注目点は、ほぼ全輸入品に制裁関税を課す「第4弾」の発動が現実化するのかどうか? 17日から米当局の公聴会があり、最速でも6月末発動ですが、過去パターンでは発動しても7月以降と見られています。6月28日~29日の大阪で開かれるG20(20カ国・地域首脳会議)で報道通りに米中トップ会談が行われるのか? など、まだ続報待ちとしか今は言えません。

 繰り返しになりますが、米中摩擦に関しては、全員どうなるか「分かりません」状態で幕開けしたのが6月の新興株市場。日本でいえば、消費増税の延期どうするの? も「分かりません」ですね。

 その中で、新興株の周辺で「分かる」ことで言えば、6月はIPOが多いということ。マザーズ、ジャスダックだけで7社ですが、目玉は6月19日上場予定の名刺管理サービスSansanです。公開規模で約390億円、時価総額は1,300億円強といきなりマザーズの時価総額7位(6位のそーせいが約1,500億円)で登場します。

 売上の伸びは強いものの、大幅赤字の状態で出てきます。バリュエーションで割高/割安の判定が困難な銘柄だらけのIPOですが、この組み合わせでこれだけ大きいIPOは昨年6月のメルカリ以来。初値がどう付くか? その後どうなるか?(メルカリは初値だけ高かった)が、新興株へのセンチメントに影響すると考えられます。

 もう一点「分かる」ことで気にしておくべきは、“GAFA”と呼ばれる米IT大手の株価が、米中摩擦以外の要因で崩れているという点。今月に入り、米議会が米IT大手に対して反トラスト法(日本でいう独占禁止法)違反がないか調査すると発表しました。どの程度の本格的な捜査が始まるのかは「分かりません」が、GAFAの寄与が大きいFANGプラス指数がベアトレンド入り(直近5月高値からの下落率が2割超に)した疑いがあることは「分かる」こと。

 この調査が日本の新興株に関係あるか? といえば「関係ない」わけですが、日本の個人投資家が近年、GAFAなど米国株を多く保有している点で紐付いてしまっています。GAFAがさらに下がると担保が痛み、手持ちの利益が乗っている銘柄で利益確定売りを急ぐ(例えば、この報道の翌日の4日に、前週好パフォーマンスだったメルカリやラクスが急落しました)…こうしたリスクも抱えているといえます。

 心配事ばかり並べてしまいましたが、ほんと最近、心配の種が多くないですか?