為替DI:「円高」予想は少数。それだけショックも大きい?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル円、ユーロ円、豪ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円の先安」見通し、マイナスの時は「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。[図-1]

図-2
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「5月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」という質問に対して、4月末の水準(111.43円)よりも「円高」と予想する投資家は全体の約29%でした。一方「円安」と予想する投資家は約30%。残りの約41%は「動かない(わからない)」という回答でした。[図-2]

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは1.02で、2カ月ぶりにプラス(=円安見通し)に転換しています。

 4月のドル/円は112.40円から110.80円までの狭いレンジ取引が続きました。1日の値動きも平均すると0.40円程度しかなく、オプションの1年物インプライド・ボラティリティは23年ぶりの低水準になりました。投資家がドル/円に対して強い相場観を持てなかったのも、ある意味当然といえます。

 低ボラティリティと米利上げ(2020年末までに1回以上の予想)による日米金利差の拡大期待でドル・キャリー取引が活発化したことがドル買い/円売りを促し、トレンドは緩やかに円安方向、113円に向かって動いているように見えます。

 一方で、ファンダメンタルズ均衡為替レート(FEER)と現在のドル/円の水準を比較すると、ドル/円は均衡レートに対して25%近く過小評価されているというデータがあります。したがって、ドル安局面においてはドル/円がアンダーバリュー状態にある分、均衡レートに向かって円高に動く余地が大きいと考えられます。

 4月のドル/円は、ドル・キャリーによる円安とバリュエーションの観点による円高期待が相殺して動きが封じ込められてしまったのですが、ここにきて、米中関税問題というバリアブルが再登場することになりました。このファクターがドル高、ドル安のどちら方向へ作用するのか現時点ではまだ結論づけられませんが、5月のマーケットはボラティリティが期待できそうです。