2019年に入り、自社株買い(自己株式の取得)を行う企業が増加しています。一般的に、自社株買いは株価に対してプラス要因となるといわれていますが、本当にそうなのでしょうか? 今回は、新元号「令和」になって最初のコラムです。これからも、個人投資家の方に役立つ知識・情報の発信を続けていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

自社株買いをする企業が増えている 

 2019年に入り、株主還元の一環として自己株式を取得する企業が増えています。NTTドコモ(9437)、日本電産(6594)、伊藤忠商事(8001)、ソニー(6758)、クボタ(6326)など。

 2月にはソフトバンクグループ(9984)が1億1,200万株、6,000億円を上限とした自社株買いを発表し、株価がストップ高に跳ね上がったのも記憶に新しいところです。

 

自社株買いにのメリットとは?

 企業が自社株買いをすることより投資家が享受するメリットは、主に2つあります。1つは、発行済み株式総数が減少するため、1株当たりの当期純利益が上昇し、PER (株価収益率)を引き下げる効果があります。

 株価1,000円、EPS1株当たり当期純利益100円、PER10倍の会社が発行済み株式総数の10%の自己株式を取得すると、EPS111円となり、PERは9倍に低下します。他の条件が変わらないままPERだけ下がっているので株価は割安となり、買いが入りやすくなるのです。

 もう1つは、浮動株を減らして需給環境を好転させる効果です。企業が発行する株式のうち、オーナーや企業間の持ち合いなど、株主が長期的に保有している銘柄はマーケットには出てきません。マーケットで売買されているのはそれ以外の「浮動株」と呼ばれるものです。

 浮動株が多いと、マーケットで流通する株式数が多くなるので、株価が上昇しにくくなります。売りたい株主が多いため、好材料が発表されてもなかなか株価が上昇しないという事例もそれに該当します。

 一方、自己株式を取得することによりマーケットに流通している株式を減らせば、浮動株が減り、売りの需要を減らすことができ、その結果、株価が上昇しやすくなります。