上場小売企業、消費税増税の今期計画に対する影響は限定的か

 2月決算の主要小売企業が既存店売上高をプラス成長で計画していること、そして政府の消費税増税対策支援額の大きさを考慮すると、今回の増税の影響は限定的とみられます。

2月期決算主要小売企業の既存店売上高(前期比)

コード 銘柄名 2019年2月期実績 2020年2月期計画
コンビニエンスストア
3382 セブン&アイ・HD 101.3% 101.5%
8028 ユニー・ファミマHD 100.4% 100.6%
2651 ローソン 99.5% 100.5%
百貨店
3086 J.フロントリテイリング 101.6% 101.9%
外食
9861 吉野家HD 100.8% 100.4%
7611 ハイデイ日高 100.7%
専門店
9843 ニトリ 102.7% 102.3%
7453 良品計画 104.1% 104.1%
食品スーパー
9974 ベルク 102.7% 100.9%
(※)ハイデイ日高:前年と同額を基本とし各店の状況を考慮した金額を基に算出
J.フロントリテイリング:「大丸松坂屋百貨店」基準
吉野家HD:「吉野家」基準
ニトリ:「ニトリ」+「デコホーム」+「通販」基準
出所:会社資料より楽天証券作成

 小売企業の2月期決算では、各企業がどのように消費税増税の影響を織り込むか注目されましたが、既存店増収率が伸びると計画する企業が目立ちました。企業側のコメントも、ニトリ(9843)は「警戒しているがチャンスでもある」と発言、J.フロントリテイリング(3086)も「富裕層の需要に期待」している姿勢を示すなど、見通しは必ずしも悲観的なものではありませんでした。

 会社のトップラインを弱気に示せないという理由も考えられますが、今回の消費税増税については、小売企業の2020年2月期売上高への影響が緩和されるポイントが3つあります。

  1. 軽減税率やポイント還元を含む、増税に対する政府の巨額予算確保済み
  2. 2020年2月期は改元や10連休など消費活性化につながるイベントがある
  3. 2019年2月期の天候不順・災害の影響が一巡

 このうち1について、先述の通り、酒類・外食を除く飲食料品が、軽減税率の対象となる見通しです。生活と関連の深い飲食料品の税率が8%で据え置かれることにより、消費者心理の悪化が緩和される他、飲食料品の増税前の極端な買い溜めや、その後の深刻な落ち込みも軽減できるでしょう。

 政府支援策は以下の通りです。2019年3月に、想定される消費税増税の負担額と同程度の対策額が、2019年度の予算として成立しています。軽減税率以外にも、幼児教育無償化やキャッシュレス決済のポイント還元などが予定されています。幼児教育などは一部の人にしか恩恵がありませんが、ポイント還元については家族構成などに関係なく多くの人が恩恵を受けると考えられます。

2019年度予算、消費税増税の影響想定額とその対応策

出所:財務省「平成31年度予算のポイント」および各種報道より楽天証券作成