1万円札の発行高は30年間で3倍に増えた!

 紙幣の技術と偽札を作る技術はイタチごっこ。まして、日本は1990年代後半の金融システムへの不安や、今日まで長らく続く低金利で、タンス預金が増加しています。1989年末(平成元年末)から2018年末(平成30年末)の日本銀行券発行高を券種ごとに見ると、1万円札は3.1倍、5,000円札は2.1倍、1,000円札は1.5倍に増えています。

▼日本銀行券発行高の推移

出所:日本銀行「通貨流通高統計」(種類別流通高)を基に筆者作成

平成元年末と平成30年末の券種別発行高の比較

出所:日本銀行「通貨流通高統計」(種類別流通高)を基に筆者作成

 1万円札の決済需要は5,000円札や1,000円札の発行高と比例しており、それ以上の増加は貯蓄動機(タンス預金)と仮定すると、30~50兆円のタンス預金が存在することになります。預金金利が今のような水準のままであれば、2024年度にはさらに増加しますし、それら全てが旧札になります。

 旧札の偽造が容易なのは明らかなので、改刷のタイミングで旧札を廃止することは利に適っているように思います。あくまでも仮説に過ぎませんが、案外、旧札廃止を見越して、5年という準備期間を設け、しかも、年末まで時間がある上期の発行なのかもしれません。