2.2019年3月期下期は車載、家電・商業・産業用などで新製品の売上高は増加した

 2019年3月期は3Q、4Qともに大幅減益となりましたが、全社売上高は前3Q前年比3.4%減、前4Q同4.8%減と比較的小幅減にとどまりました。セグメント別に見ると、精密小型モータ売上高が各々同8.2%減、同8.5%減と最も減収率が高く、次に車載が同6.0%減、同6.3%減と比較的減収率が高かったものの、家電・商業・産業用は同0.5%減、同1.3%減とほぼ横ばいでした。

 精密小型モータは、HDD用モータが前3Q、4Qともに二桁減収となりましたが、車載、家電・商業・産業用は既存製品が在庫調整する中で新製品が伸びたため、車載は一桁減収、家電・商業・産業用は横ばいにとどまりました。

 特に目立った新製品は、車載ではEV(電気自動車)用トラクションモータ(駆動用モータ)です。中国の大手自動車メーカー、広州汽車の子会社である広汽新能源汽車の2車種に採用されました。広州汽車以外にもう1社から受注を獲得しています。また、マイルドHV用モータを欧州の大手自動車部品メーカーから受注しました。

 この結果、2020年3月期のトラクションモータ出荷台数は当初見通しの4万台から10万台へ、2021年3月期は14万台から20万台へ上方修正されました。

 また、家電・商業・産業用では、エアコン用モータの受注が増加しています。

表6 日本電産の製品グループ別業績推移

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 日本電産のセグメント別営業利益

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成
注:車載及び家電・商業・産業用は2017年3月期より車載と家電・商業・産業用に分離

 

3.2020年3月期会社予想は26%営業増益

 会社予想では、2020年3月期は、売上高1兆6,500億円(前年比8.7%増)、営業利益1,750億円(同26.2%増)となる見込みです。営業利益は今上期750億円(同23.6%減)、今下期1,000億円(同2.5倍)と下期に急回復するシナリオです。今上期の中国景気について会社側は現在のところ慎重ですが、下期は、電動パワステモータ、次世代ブレーキ用モータ、エアコン用モータなどをけん引役に回復すると会社側は考えています。

 また、前期に行った原価低減効果が2020年3月期、2021年3月期に発現すると思われます。

 中期的には、買収することになったオムロンオートモーティブエレクトロニクス(実際の買収は2019年10月末の予定、買収価額は約1,000億円)と日本電産エレシスのECU(自動車各部分の電子制御ユニット)との相乗効果に期待できます。オムロンオートモーティブエレクトロニクス単体と子会社を買収するため、今回の買収対象はオムロン車載事業となる見込みですが、この業績は2018年3月期売上高1,132億円(前年比0.5%増)、営業利益58億円(同18.4%減)です。

 これらを考慮すると、2021年3月期も順調な業績が予想されます。

 2019年1月17日付けの2019年3月期会社予想業績下方修正のあと、株価は急速に戻してきました。2020年3月期業績に対しては予想PERが既に34倍に上昇しており、やや割高感が出ていますが、2021年3月期以降の業績拡大を見込むと、株価は一段高が期待できると思われます。楽天証券の2021年3月期予想EPS553.2円に想定PER30~35倍を当てはめ今後6~12カ月間の目標株価を1万8,000円とします。一定の投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄:アドバンテスト(6857)日本電産(6594)