ZOZOARIGATOメンバーシップによる「ユーザーの囲い込み」

 ZOZOARIGATOメンバーシップは一部ブランドの解約などネガティブな側面に注目が集まっていますが、長い目で見ればユーザーの囲い込みによる業績拡大に寄与すると考えています。

 ZOZOARIGATOメンバーシップが1年間フルに稼働した後は、割引率の負担はおおむね一巡すると考えられ、ZOZOARIGATOメンバーシップによるユーザー囲い込み効果に注目が集まるでしょう。2種類ある会費のうち、月額500円ではなく、年間3,000円を選んだ場合、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のAmazonプライム(有料会員プログラム)のように、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」で購入したほうがお得だ、もしくは、3,000円分を取り返さなければいけないという消費者心理が働くと考えられます。アマゾン・ドット・コムを始め、オンラインでアパレルを販売する競合が手強くなる中、ユーザーをいかに囲い込むか、同社はその先手を打ったと考えられます。

 同プログラムは、オンライン中心で展開している新興ブランド群にとっては、新規顧客開拓のチャンスとなるでしょう。ユーザー側にも、一消費者として割安感を望む層は多いと考えられ、同プログラムは着実に需要を獲得していくと考えらえます。

なお、足元では、衣料品大手の オンワードHD(8016)ライトオン(7445)、ミキハウスが出品を停止したことを受け、ブランド側との関係悪化が懸念されています。

 ZOZOARIGATOメンバーシップは販売価格の値下げ圧力につながる恐れがあるため、百貨店でリアル店舗を展開しているブランドとの関係は今後も改善しないとみられます。ただし、決算説明会時の社長の発言や、ZOZOTOWNでは受託ベースで1,255のストアが展開していること(2019年3月期3Q時点)を考慮すると、販売停止ブランドによる影響は小さいと推定されます。

 参考までにZOZOARIGATOメンバーシップの詳細を述べると、同サービスでは会費(年間プラン3,000円、または月間プラン500円)を払えば、ZOZO側の負担で、購入価格の10%が割引かれます(新規ZOZOTOWNユーザーの場合は初月のみ30%割引)。仮に、同プログラムを利用する新規ZOZOTOWNユーザーと既存ユーザーの比率が1対9だった場合、平均割引率は12%となります。2019年3月期3Qの平均商品単価4,759円を例にすると、12%は571円にあたります。

 その代わり、ZOZO側は1カ月単位で500円、もしくは1年単位で3,000円の会員費を獲得します(どちらも税抜き価格)。1カ月のみの会員となるか、お得感がある半年単位の会員となるか、1カ月単位のはずが自動繰り越しで継続してしまうのか、ユーザーの選択はふたを開けてみないとわかりません。仮に、1カ月会員(1カ月500円)と半年会員(1カ月250円)が半々の割合だとすれば、1ユーザーあたり1カ月あたり375円を獲得することになります。

 割引率の大きさを考えると、割引の負担額は獲得できる会員費を上回る可能性が高いですが、1年間稼働後は割引率の負担が一巡する見込みであり、同プログラムの囲い込み効果が表れると考えられます。