株価推移
ZOZO(3092)の株価推移(2019年3月22日まで)
ZOZO(3092)の株価は、2018年半ばまでは、収益性の高いビジネスモデルへの評価とPB(プライベートブランド)戦略に対する期待を背景に上昇基調でした。しかしその後、PB戦略への懸念が広がったことから、下落基調をたどっています。2019年1月末に通期会社計画を下方修正したほか、新サービスである「ZOZOARIGATOメンバーシップ」にも懸念が広がり、直近の株価は上値の重い展開です。
投資判断
目標株価を3,200円とします。2021年3月期の楽天証券予想EPS(1株当たり利益)107.21円、予想PER(株価収益率)を30倍と想定しています。2020年3月期、2021年3月期の営業利益は二桁成長の見込みであり、2021年3月期時点の妥当PERを30倍とみています。同社の営業利益の成長率とPERの相関係数は0.52と関連性が認められ(2010年3月期~2018年3月期)、マーケットは高収益のビジネスモデルと潜在需要に裏付けされた利益成長性を評価してきたとみられます。 今後も利益がしっかりと拡大する可能性が高いことを考慮すると、予想PER30倍程度で評価されると予想します。
ZOZOの営業利益成長率とPERには関連性あり
期間:2010年3月期~2021年3月期
業績見通し
ZOZOの連結業績推移
2019年3月期については、10%の営業減益となるものの、会社計画である19%減益までは落ち込まないと見込んでいます。営業減益の主な要因は、PB事業に関連した100億円以上の赤字発生です。ただ、2019年3月期4QについてはPB事業に関連したコストを抑制すると考えられることから、会社側が想定しているほどの支出にはならないでしょう。
2020年3月期の営業利益は21%伸びる見込みです。「ZOZOARIGATOメンバーシップ」の影響を受け、売上高の伸び率が低水準にとどまる見込みですがPB事業の赤字幅が縮小する可能性が高いため、利益ベースではしっかりと推移するでしょう。2018年12月から始まったZOZOARIGATOメンバーシップがどのようにユーザーに浸透するのかは不透明ですが、2020年3月期は総取扱高の6割が10%強の値引き対象になると仮定しています。同社の売上高は、「商品取扱高×同社の手数料率」であるため、同社の負担による値引き分は、売上高の減少につながります。
なお、消費増税については警戒する必要がありますが、オンラインショッピング市場自体の需要の拡大を考慮すると、影響は比較的小さいと考えられます。競合各社が値下げクーポンやポイントを発行した場合は追随する可能性が高いですが、収益性の高い広告事業の拡大や人件費の効率化によって、コストを吸収できるとみています。
2021年3月期は営業利益が3割強拡大すると予想しています。収益性の押し下げ要因となりうるZOZOARIGATOメンバーシップが、スタートから1年以上を経過することによって、割引負担の影響は一巡すると考えられます。さらに、同プログラムには顧客を囲い込む効果があると考えられるため(詳細は後述)、商品取扱高も堅調に推移するとみています。
ZOZOARIGATOメンバーシップによる「ユーザーの囲い込み」
ZOZOARIGATOメンバーシップは一部ブランドの解約などネガティブな側面に注目が集まっていますが、長い目で見ればユーザーの囲い込みによる業績拡大に寄与すると考えています。
ZOZOARIGATOメンバーシップが1年間フルに稼働した後は、割引率の負担はおおむね一巡すると考えられ、ZOZOARIGATOメンバーシップによるユーザー囲い込み効果に注目が集まるでしょう。2種類ある会費のうち、月額500円ではなく、年間3,000円を選んだ場合、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のAmazonプライム(有料会員プログラム)のように、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」で購入したほうがお得だ、もしくは、3,000円分を取り返さなければいけないという消費者心理が働くと考えられます。アマゾン・ドット・コムを始め、オンラインでアパレルを販売する競合が手強くなる中、ユーザーをいかに囲い込むか、同社はその先手を打ったと考えられます。
同プログラムは、オンライン中心で展開している新興ブランド群にとっては、新規顧客開拓のチャンスとなるでしょう。ユーザー側にも、一消費者として割安感を望む層は多いと考えられ、同プログラムは着実に需要を獲得していくと考えらえます。
なお、足元では、衣料品大手の オンワードHD(8016)、 ライトオン(7445)、ミキハウスが出品を停止したことを受け、ブランド側との関係悪化が懸念されています。
ZOZOARIGATOメンバーシップは販売価格の値下げ圧力につながる恐れがあるため、百貨店でリアル店舗を展開しているブランドとの関係は今後も改善しないとみられます。ただし、決算説明会時の社長の発言や、ZOZOTOWNでは受託ベースで1,255のストアが展開していること(2019年3月期3Q時点)を考慮すると、販売停止ブランドによる影響は小さいと推定されます。
参考までにZOZOARIGATOメンバーシップの詳細を述べると、同サービスでは会費(年間プラン3,000円、または月間プラン500円)を払えば、ZOZO側の負担で、購入価格の10%が割引かれます(新規ZOZOTOWNユーザーの場合は初月のみ30%割引)。仮に、同プログラムを利用する新規ZOZOTOWNユーザーと既存ユーザーの比率が1対9だった場合、平均割引率は12%となります。2019年3月期3Qの平均商品単価4,759円を例にすると、12%は571円にあたります。
その代わり、ZOZO側は1カ月単位で500円、もしくは1年単位で3,000円の会員費を獲得します(どちらも税抜き価格)。1カ月のみの会員となるか、お得感がある半年単位の会員となるか、1カ月単位のはずが自動繰り越しで継続してしまうのか、ユーザーの選択はふたを開けてみないとわかりません。仮に、1カ月会員(1カ月500円)と半年会員(1カ月250円)が半々の割合だとすれば、1ユーザーあたり1カ月あたり375円を獲得することになります。
割引率の大きさを考えると、割引の負担額は獲得できる会員費を上回る可能性が高いですが、1年間稼働後は割引率の負担が一巡する見込みであり、同プログラムの囲い込み効果が表れると考えられます。
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