英政府は何も決められない?ブレグジットの行方は?

 ポピュリズムの蔓延で、反グローバル・反資本主義の政策が平気で行われる時代になりつつあります。今、その流れに最も翻弄されているのが、英国です。2016年6月の国民投票で、EUからの離脱方針を決めたものの、国内の強硬離脱派と、穏健離脱派・EU残留派で意見が合わず、EUとの離脱条件で合意が得られません。

 メイ英首相がEUと合意した離脱案は、2度に渡り英国議会で否決されました。ただし、「合意なき離脱」になると、英国もEUも大きなダメージを受けるので、英議会は、3月29日に予定されていたEU離脱を、6月末まで延期する方針を決めました。

 ところが、6月末までの離脱延期をEUが認めませんでした。英国を除くEU首脳27カ国は21日に、延期期間を短縮する決定をしました。具体的には、以下の通りです。

【1】メイ英首相とEUがまとめた離脱合意案を英議会が承認するならば、5月22日までの離脱延期を認める。

【2】合意案を英議会が承認しないならば、4月12日までの短期延期しか認めない。

 メイ首相がEUとまとめた合意案が、英議会で承認される可能性は、ほぼありません。となると、上記の【2】になる可能性が高いと言えます。EUは【2】になった場合、英国に2つの選択肢を与えています。それが、以下の【3】【4】です。

【3】英国が5月23~26日に控えているEU議会選挙に参加しないなら、「合意なき離脱」となる。

【4】英国がEU議会選挙に参加するなら、EUとの離脱方針を抜本的に見直すための時間を英国に与える。つまり、英国がEU離脱を「長期延期」することを認める。

 この内容から、英国が4月12日に「合意なき離脱」になるリスクが出たと解釈する向きもあります。私は【3】ではなく、【4】が選択される可能性がきわめて高いと考えています。メイ英首相は、5月のEU議会選挙への英国の参加はあり得ないとしてきましたが、合意なき離脱を避けるために、参加を認めざるを得なくなると思います。そうなると次は、英国でEU離脱の抜本的見直し作業が始まります。メイ首相の退陣・総選挙、またはEU離脱の是非を問う国民投票のやり直しなどが、選択肢に入ってきます。

 世界景気の悪化を受けて、英国民の意見も、変わってきています。ホンダが英国生産から撤退を発表したこと、トヨタが合意なき離脱なら英生産から撤退する方針を示したことも影響しています。ロンドンに欧州のメインオフィスを構える金融機関が、メインオフィスを他のEU加盟国に移す検討を始めていることも伝えられています。英議会が、離脱合意案を可決できないのは、強硬離脱派が「EUの支配が残る」と反対していることだけでなく、離脱を撤回すべきと考える議員が増えていることも影響しています。

 私は、英国が離脱方針の抜本的見直しに着手し、最終的に、離脱自体を撤回する可能性も、少しだけ出てきたと考えています。

 

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