日本企業の評価について、合理的かつへそ曲がりに考えてみた

 近年の日本の株価は、海外の株価(より正確には海外投資家の投資行動)の影響を強く受けており、日経平均の変動の大半が、例えばNYダウとドル/円の為替レートで説明できるような状況だ。しかし、米国の株価と比較して日本の株価はいまひとつパフォーマンスが奮わず、この理由としては「日本企業の経営効率が悪いからだ」「日本企業のガバナンス(企業統治)が良くないからだ」といった声を聞くことがしばしばある。

 これらは本当なのだろうか? 以下3つの要因について考えてみる。
あらかじめ述べておくが、いずれも、世間的には「へそ曲がり」と言われかねない意見を述べる。それは、投資にあっては、「合理的かつへそ曲がり」な考え方が有効だと思うからだ。
 

社外取締役は役に立つのか?

 コーポレート・ガバナンスについては、コーポレート・ガバナンス・コードが制定され、また、今後上場企業に社外取締役の設置を義務づけようとするなど、大まかにいうと米国式のガバナンスを取り入れようとする動きが目立つ。

 しかし、例えば社外取締役はどの程度役に立つのだろうか。近年でいうと、東芝やスルガ銀行のような深刻な不祥事のあった上場会社は元社員や創業一族出身者などとは異なる、「有識者」的社外取締役を迎えていた会社だった。

 例えばスルガ銀行の場合、不動産業界における同行の扱われ方を軽くヒアリングすると、貸家向けのローン・ビジネスにあって同行が大きな問題を抱えていたことはわかったのではないかと思えるのだが、社外取締役はそのようなチェックには動かなかったようだ。

 不祥事企業が社外取締役を有していたことや、委員会等設置会社で進んでいるとされるコーポレート・ガバナンスの体制を持っていたことをもって、これらが無効だと主張することは、「社外取締役がなかったら、もっと悪かったかも知れないではないか」という反論に対して有効でないので、論証として機能しないように思われる。しかし、今のところ、優れているといわれるコーポレート・ガバナンス体制を有していることが、その企業の株式への投資パフォーマンスにプラスの影響を与えているというエビデンスはないと理解しておくことが現実的だろう。

 考えるに、当該企業のビジネスに精通している取締役でないと、

  • 当該企業のリスクをチェックできない
  • ビジネスに有効な(儲けを増やすような)助言が期待できない
  • 理解の浅い取締役がいることで取締役会の議論のレベルが下がる

といった弊害があるように思われる。

 もちろん、個々の社外取締役には大きな個人差があるから、上記の議論が全ての企業及び社外取締役に当てはまる訳ではないだろうということは申し上げておく。筆者は、当面、

  1. 社外取締役の任命や委員会等設置会社への移行などの「先進的なガバナンス体制」は投資評価の材料としてプラスには評価しなくてよい
     
  2. 社外取締役の義務化はどちらかというと反対である(会社と株主が個々に決めたらよく、義務化は必要ない)

という意見を持っている。