原油価格について

(1)(86ドル?原油に)そんな価値はない。30ドルだ(2011年10月21日)。

ーーWhy is crude oil priced at $86/Barrel? OPEC is ripping us off. Not worth $30/Barrel. America needs new leaders.

(2)もし我々が掘削すれば25ドルだろう(2012年9月19日)。

ーーOil would be $25 a barrel if our government would let us drill. Our country would be rich again--who needs OPEC.

 

米国内のガソリン価格について

(3)(ガソリン価格の上昇は)全ての米国人に税金を課すことだ(2012年3月16日)。

ーーRising gas prices are causing a steep rise in consumer prices and will slow any future economic growth. It is a tax on all Americans.

(4)次の選挙の争点は雇用とガソリン価格だろう(2012年3月12日)。

ーーSeems to be the next election must be about jobs and gas prices--not birth control.

 

米国のエネルギー産業について

(5)フラッキング(シェールの採取技術)は、アメリカをエネルギー分野での独立に導くだろう(2012年5月3日付)。

ーーFracking will lead to American energy independence. With price of natural gas continuing to drop, we can be at a tremendous advantage.

(6)米国は独自の資源でエネルギー分野において独立しなければならない(2012年4月6日)

ーー$6 gas is coming sooner than later. America must become energy independent with our own resources and fast.Also.

 

OPECについて

(7)我々は本気で原油価格を下げるよう、OPECに圧力をかけなければならない(2012年5月9日)。

ーーGas prices are still too high. We really need to pressure OPEC to lower the price of oil.

 まとめれば、「米国内のガソリン価格の上昇は増税のようであり、その原因の原油価格の上昇を、OPECが先導している。米国国内では新しい技術が開発され、エネルギー分野で独立できる可能性が生じている。米国が自国で原油を採掘すれば、原油価格は30ドル程度となるだろう」となります。

 また、2012年の米大統領選挙にあたり、トランプ氏は前年の世論調査で共和党の候補として2位の支持率(1位はロムニー氏)を獲得したものの、同年2月に共和党大統領候補としてロムニーを支持するとし、5月に不出馬を表明。ちょうどこのころに、(4)のツイートをし、「ガソリン価格が高い背景にOPECの動向があり、その高いガソリン価格が増税のように、いかに米国民にのしかかっているか」を問題視していました。このことから、トランプ氏が次回の2016年米大統領選挙に出馬すべく意欲を燃やしていたことが、うかがえます。

 つまり、増税のようなガソリン高をもたらすOPECを敵とし、それに対抗する姿勢を材料にして票集めをするという構図があったわけです。トランプ大統領の「原油高・OPECけん制」は、就任前から一貫して継続していると言えます。

 ところでなぜ、トランプ氏はここまでOPECを批判するのでしょうか。

 トランプ大統領が一貫して掲げている原油高・OPEC批判、特にOPEC批判の裏には、「かつての素晴らしい米国経済に戻るため(make America great again米国を再び偉大な国にしよう)には、OPECの力が弱まってほしい」と考えている可能性があります。

 そのトランプ氏がOPECを批判し続けてきた理由に、1960年代前半に起きたOPECの勢力拡大が挙げられると考えています。

 トランプ氏は太平洋戦争終戦の翌年生まれの72歳(2019年時点)です。1980年代、トランプ氏はレーガン政権下の景気回復時に成功を収めるなど、米国経済が世界経済をけん引するさまを第一線で見つめてきたと言えます。

 そのトランプ氏は、世界で初めて商業化に成功してメジャー(国際石油資本)の一翼を担う企業が育った米国が、原油生産量でサウジアラビアに追い抜かれていく過程を見せつけられました。トランプ氏が30歳のころです。

 図2は、主要な3つの産油国の原油生産量と、トランプ大統領の年齢を示したものです、

図2:主要3産油国の原油生産量とトランプ大統領の年齢

出所:OPECのデータおよび各種資料より筆者作成

 若かりし頃のトランプ氏は、米国などのメジャーがOPECに価格決定権を奪われる中、米国の原油生産量がどんどん減少していく様子に注目していた可能性があります。米国国内の石油産業が他の産油国に押されながら、「いつかはかつての姿を」という気持ちが「make America great again」の一部分となった可能性は否定できません。

 米国国内の自動車、鉄鋼、石炭などの伝統的産業に火をつけ、米国内の雇用、賃金、税収等を拡大させることを進めてきたトランプ大統領の方針の中には、石油産業の再興という命題があり、それがOPECへの対抗心を芽生えさせた可能性があると筆者は考えています。

我々の新しいエネルギー政策は数百万の雇用を創出する(2017年6月29日)。
ーーOur new American Energy Policy will unlock MILLIONS of jobs & TRILLIONS in wealth. We are on the cusp of a true energy REVOLUTION.  

 このツイートも原油や石炭などの従来型のエネルギー産業が、雇用を創出するとしています。