アップル

 

 アップルは1月2日に利益警告しました。同社の利益警告は20年ぶりくらいで、極めて珍しい出来事です。このため市場関係者はこれを「アップル・ショック」と呼びました。

 その利益警告では、2019年第1四半期(=カレンダーでは2018年12月期)の売上高が840億ドルになると発表されました。

 これは旧ガイダンスの890億~930億ドルより低いばかりでなく、去年の実績も下回ることになり、投資家は慌てて期待値を下げることを余儀なくされました。

 この利益警告の後で発表された第1四半期決算は結局、EPSが予想4.17ドルに対し4.18ドル、売上高が予想840億ドルに対し843億ドル、売上高成長率は前年同期比-4.5%でした。

 注目されたサービス売上高は+19%の108.8億ドルでした。サービス・グロスマージンは62.8%でした。これは予想に一致しました。

 iPhone売上高は前年比-15%の520億ドルでした。地域別では中国売上高が-27%の132億ドルと落ち込んだのが目を引きました。

 2019年第2四半期の売上高は予想589.7億ドルに対し新ガイダンス550~590億ドルが提示されました。グロスマージンは予想38.1%に対し新ガイダンス37~38%が提示されました。

 アップルは今、iPhoneに代表されるハードウェアを売る会社からサービスを売る会社への脱皮を図っています。その一つの試みとして4月を目処にネットフリックスに似たビデオ・ストリーミング・サービスを開始するそうです。

 アップルはこのサービスの大詰めに入っています。ライオンズゲートの「スターズ」、CBSの「ショータイム」、バイアコムらは既にアップルのサービスへの参加を決めています。

 今のところ、ネットフリックスはこのサービスの中に含まれていません。HBO、Huluも参加しない可能性があるそうです。

 アップルのストリーミング・サービスは、iPhoneのようなアップルのデバイスを持っている顧客には無料配信される部分と、有料配信される部分で構成されているとのこと。有料配信部分に関してはアップルが定期購読収入の3割を取り、残りの7割をコンテンツ提供企業に渡すアレンジになっているそうです。

 現在、アップルの「App Store」を通じて配信されている「HBO Now」やネットフリックスのサービスに関してはアップルの取り分は15%となっています。またアップルのデバイスから他社の既存のストリーミング・サービスを視聴することは、これまで通りできるそうです。

 さらにアップルはビデオ・ゲームのパブリッシャーとなるべくゲーム会社と交渉中です。 同社がそういう新しい方向性を打ち出したことに併せて、経営幹部の入れ替えも激しいペースで起こっており、例えばアップル・ストアの責任者、アンジェラ・アーレンツは退社することになりました。

 その一方で同社はソニー・ピクチャーズから幹部をスカウトし、ビデオ・コンテンツの制作に力を入れ始めています。

 アップルはニュース・コンテンツを提供したい考えですが、これに関してメディア・パートナーは冷ややかな対応をしています。

 アップルはすでにハードウェアを通じて熱心なファンを確保し、App Storeなどを通じサービスに対する課金の基礎もできているため、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業への生まれ変わりは、遅かれ早かれ実現すると思います。

 しかし通常、そのような移行期には売上高が一時的に大きく落ち込むなどのネガティブ効果が伴います。それを同社がどう切り抜けるかが見ものです。

 最後にアップルはペイメント関連でも有力なプレーヤーになることを画策しています。

 この絡みで、アップルはゴールドマン・サックスと組んでこの春、クレジットカードを発行します。このクレジットカードは試験的にまずアップルとゴールドマン・サックスの従業員に提供されます。iPhoneと連携させることで、クレジットカードの使用額が自分の設定した目標にどれだけ近づいているか、ポイント・プログラムの進捗状況、残高などの管理がしやすくなります。

 現在、アップルはiPhoneユーザーがそのデバイスでクレカを通じて決済した際、アップル・ペイを通じて少額のフィーを稼いでいます。しかしアップル/ゴールドマン・カードを使用すれば、より高いマージンを確保できます。

 なおアップルは既存のカード会社との契約のみが可能で、アップル/ゴールドマン・サックス・カードをアップル・ペイのデフォルトにすることはできません。