「逆イールド」その後

 その後、米国の逆イールドはどうなったでしょうか。まず、以下のグラフをご覧ください。

米国の10年・3年・3カ月金利の日次推移:2018年1月2日~2019年1月18日

 

 

 米国の長期金利(10年・3年)は、12月中は米景気に減速懸念が広がってきたことを受けてさらに低下しました。5年金利も3年金利とほぼ同じ動きで、12月中は低下が続きました。
ただし、短期(3カ月)金利は下がっていません。12月19日に、FRB(米連邦準備制度理事会)が0.25%の利上げを実施したためです。その結果、1月4日には3年金利が3カ月金利よりも低くなる「逆イールド」が起こりました。景気減速懸念がある中で、FRBが利上げを強行したことが、長短金利の逆転につながりました。

 ただし、それは一瞬でした。そこから、米長期金利はリバウンドしました。パウエルFRB議長が利上げの一時停止を示唆したため、米国株が急反発し、米景気に対する悲観がやや緩和しました。それを受け長期金利が反発し、長短金利の逆イールドはなんとか解消しました。

 

「長期金利上昇」も「逆イールド」も嫌う米国株

 2018年には、米長期金利の動きが原因となった世界株安ショックが3回ありました。1回目は2月、2回目は10月、3回目が12月です。

 2月は長期金利が3%に接近したことが嫌気され、10月は3.2%に達したことが嫌気され、世界株安につながりました。12月は、逆イールドが嫌気されました。 

米長期(10年)金利の日次推移:2018年1月2日~2019年1月18日

 

 昨年2月の「金利上昇ショック」は、2月2日に発表された1月の米雇用統計がきっかけで起こりました。平均賃金上昇率が3%に近づいていることが分かり、インフレ懸念が高まり、米長期金利が3%に向かって上昇しました。

 ここで、金利上昇や株式市場のボラティリティ(変動性)上昇をトリガー(ひきがね)とした株のプログラム売りが一斉に発動され、世界的に株が急落しました。日経平均も、外国人の売りで急落しました。

 ただし、プログラム売りが一巡すると、それ以上積極的に売る向きはなく、株は下げ止まりました。その後、米長期金利3%という数字に、株式市場は耐性を示すようになりました。「米長期金利が3%でも、株式市場にとって悪材料とはならない」との見方が広がり、世界的に株が反発しました。

 ところが10月に入り、長期金利が3.2%をつけたところで、再びNYダウが急落し、世界株安につながりました。3・6・9月に利上げした上、さらに、12月にも米利上げが見込まれることから、再び金利上昇への不安が高まりました。

 ただし、株が急落すると、世界景気の先行きに不安が広がります。そうなると、長期金利の上昇は止まります。そして、また、緩やかに低下を始めます。10月の長期金利上昇ショックの後、米長期金利は順調に低下し、3%を割れるところまで、下がってきました。これで目先、金利上昇不安で株が売られることはなくなったと思われた矢先、12月に、逆イールド・ショックが起こりました。