はじめに

 今回のアンケート調査は12月25日(火)~12月27日(木)の期間で行われました。

 2018年の日経平均株価は2万14円で1年の取引を終えました。節目の2万円台は何とか維持したものの、前年末比で下落となったのは7年ぶりで、いわゆるアベノミクス相場が始まってからは初となります。月間ベースでも、前月末比での下げ幅(2,337円安)が、リーマン・ショック直後の2008年10月(2,682円安)以来の大きさとなっています。

 改めて12月の国内株市場の動きを振り返ると、日経平均は11月下旬からの株価反発の流れを引き継いでスタートし、月初の12月3日の取引では2万2,500円台を回復しました。しかし、結局この日が月間の高値となり、以降は下落に転じてほぼ一本調子で下げ足を早めることとなりました。

 米国景気のピークアウトや中国経済の減速、企業業績の鈍化に対する警戒感をはじめ、米中関係や欧州情勢、米政権運営といった既存の懸念材料の先行き不透明感が相変わらず継続していること、そして、年末の薄商いで先物取引に振り回されやすい相場地合いの中、悲観的なムードが高まってしまったことも売りに拍車をかけた格好です。

 そのような中で行われた今回のアンケートですが、3,400名を超える方からの回答を頂きました。アンケートの実施期間も含めて12月は株式市場の軟調地合いが続いたため、日経平均の見通しDIが大幅に悪化する結果となりました。同様に為替の見通しについても、円高見通しが強まっている印象になっています。

 

日経平均株価の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

見通しDIが急激に悪化

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果ですが、1カ月先がマイナス50.60、3カ月先はマイナス25.49となりました。前回調査の値(マイナス0.44とマイナス5.18で)と比べると、両者ともに大幅に悪化しています。

 とりわけ、1カ月先DIの値はインパクトがありますが、DIの値が示しているのは強気派と弱気派の割合差です。回答の内訳を示す円グラフを見ると、強気派が10.37%なのに対して、弱気派が60.97%となっていることが分かります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 バックナンバーを見ても、これまでで最も弱かった1カ月先DIの記録は、本調査が始まったリーマン・ショック直後の2008年10月調査(マイナス48.21)でした。今回の結果は調査開始以来の記録を更新したことになります。ちなみに3カ月先DIも記録を更新しています(これまでの記録は2008年12月調査のマイナス20.74でした)。

 今年の秋に予定されている消費税率の引き上げについて、安倍晋三首相はこれまで「リーマン・ショック級の出来事がない限り引き上げる」と述べていますが、楽天DI調査に限って言えば、リーマン・ショック級の結果となっています。

 再び回答の内訳に話を戻しますと、株式市場が軟調になると、当たり前ではありますが強気派は減少します。そしてその減少した分は弱気派もしくは中立派に流れます。大抵の場合、弱気派よりも中立派に流れることが多いのですが、今回の調査では、中立派の割合も大きく減っていて、「強気派から弱気派」だけでなく、「中立派から弱気派」の動きも目立っていたことになります。

 もちろん、調査期間中である12月26日の日経平均が取引時間中に1万9,000円割れの場面を見せるなど、かなりムードが良くなかったことを差し引く必要はありますが、先行きの相場展開に対してかなり楽観視しづらくなっている心理状況がうかがえます。

 もっとも、昨年末の株価の急落は、国内外の景気ピークアウト感や、それに伴う企業業績の鈍化、米中関係や欧州情勢、米政権運営といった既存の懸念材料の先行き不透明感などをはじめ、悲観的なムードの高まりによる投げ売りが重なったものであると考えられます。つまり、これからかもしれない不安を先取りして下落してきたと考えられます。

 したがって、2019年相場はその答え合わせをするような動きになりそうです。経済指標や企業業績など、先取りしたほど悪くなければ、株価は派手に下げた分だけに大幅に反発する展開もあり得えます。ただその一方で、「逆資産効果」によって、実体経済が株安に追随するかたちで悪化する懸念もくすぶっていっています。さらに米中関係の行方などは政治的要素が絡み、状況がコロコロ変わりやすい性質でもあるため、しばらくは荒い値動きの中で方向感を探る展開が続くかもしれません。