「年末高アノマリー」はなかった

 ところが多くの個人投資家は、残念ながら今回の株価急落の影響をまともに受けています。その理由は、過去の成功体験に引きずられているからだと筆者は思っています。

 例えば過去の成功体験の1つとして、「年末高アノマリー」があります。アノマリーとは、理論的な根拠はないものの経験則上よく見られる傾向のことです。

 2012年から2017年まで6年間の間、年末にかけて日本株は上昇しました。これを受けて、7年目である2018年も同様に、年末に向け日本株は上昇する、と信じていた投資家が少なくありませんでした。その結果、株価が大きく値下がりしているにもかかわらず持ち続けてしまい、大きな損失を被ってしまっています。

 しかし筆者は、年末高アノマリーを信じてはいけないと、このコラムでも以前に指摘しました(「年末高アノマリー」は乗るべき?無視するべき?)。6年間続いたからと言って、7年間続くとは限らないからです。

 株式投資では100%というものはありません。今までこうだったからこれからもこうなる、という考え方は極めて危険です。
 株価が上に行っても下に行っても対応できるような対策を取らなければ、アノマリーが発生しなかった今年のような状況になった場合に大きな損失を被ってしまうからです。

 

押し目買いが報われるのは上昇相場のときだけ

 もう1つ、個人投資家の方に非常に多い行動が、株価が値下がりしているところを逆張りで買い向かう「押し目買い」です。

 東京証券取引所が毎週発表している「投資部門別売買状況」をみると、株価が大きく値下がりしているときはほぼ100%と言ってよいほど、個人投資家は株を買い越しています。
 これは、株を安く買っておけば、そこから株価が上昇して利益を得ることができると考える個人投資家が多いからです。

 また、買った株が値下がりしたときに、損切りをせずにそのまま保有を続ける個人投資家も極めて多いです。これも持ち続けていればやがて株価は上昇する、という考え方によるものです。

 でもこれらの考え方が通用するのは上昇相場のときだけであることに気がつかなければなりません。
 確かに2012年11月以降のアベノミクス相場では、一時的に株価が大きく値下がりしてもその後回復し、再び上昇に転じました。2016年1月~2月のいわゆるチャイナ・ショックによる急落のときも同様でした。

 だから今回の下落も、我慢して耐えていればやがては報われるし、逆に安く買うことのできるよい機会であるとして実際に株価が値下がりする中個人投資家が買い向かっています。

 しかし、もし今の日本株がすでに下落相場に転じていたとしたなら、株を持ち続ければ持ち続けるほど株価が下落して含み損が膨らんでしまいますし、安くなったと喜んで逆張りで買っても、そこからさらに大きく株価が値下がりしてしまうことになります。

 

ファンダメンタルより株価の動きを重視

 もし、今後も上昇相場が続くと無意識のうちに思ってしまっている方がいるのであれば、そんなことはないといち早く認識を改めてください。

 日経平均株価の過去の月足チャートをみてみると、株価は上昇と下落を繰り返していて、アベノミクス相場による6年間もの株価上昇は逆にバブル崩壊後の30年の中ではイレギュラーであることがよく分かります。

 株価が下落相場に突入した初期段階では、まだまだ企業業績や国内外の景気などファンダメンタルの面では好調であることが多いです。そのため、それを根拠に株価の先行きに対して強気を維持する投資家が大勢います。

 ところが、株価は景気に先行して動きます。今はファンダメンタルが確かによくても、それがピークアウトしてやがて株価に追いついていきます。ファンダメンタルの悪化が明らかになったころには、すでに株価は天井から大きく下落していて、保有株も多額の含み損により手の施しようがない状態になっている可能性も大いにあります。

 もし今後の株価の先行きを楽観視している方がいるならば、株価が来年以降大きく下落する可能性も十分あること、そして株価が大きく下落してもダメージを最小限に抑えるように株価のトレンドに逆らって逆張りするのではなく、トレンドに従って順張りで行動するようにしてください。

 2018年もコラムをご覧いただきましてありがとうございます。個人投資家には厳しい環境が続いていますが、連載10年目を迎え、難しい状況を皆さんと一緒に乗り越えていけるよう、有用かつ実践的なコラムの提供を2019年も続けてまいります。

 どうぞよいお年をお迎えください。