12月17日~21日 原油マーケットレビュー

  前週のNY原油相場は大幅下落。世界的な景気先行き不安を背景にリスク回避姿勢が強まり、原油相場は売りが先行する展開となった。米国やロシアの生産水準が高いことも圧迫要因となった。この週から当限に回ったWTI期近2月限は50ドルを割り込んで一時45.13ドルまで下落し、期近ベースとしては昨年7月以来の安値を付ける場面も見られた。

 世界的な景況感悪化への懸念が広がっている。前々週には中国や欧州の景況感悪化が示されたが、この週は米国の景気減速を示す経済指標の発表があった。12月のNY連銀製造業景況指数は市場予想を下回り、1年7ヶ月ぶりの低水準へと落ち込み、米国の経済成長が緩和しつつある兆候が示された格好。これを受けて株式市場が下落、リスク選好度の低下の影響は原油相場にも及んだ。市場の注目が集まった米連邦公開市場委員会(FOMC)後、経済失速への懸念はさらに強まった。米連邦準備理事会(FRB)はFOMCで今年4回目の利上げを決定した。来年の利上げ見通しは2回と前回見通しの3回から引き下げられたが、バランスシート縮小継続方針が示されるなど市場が見込んでいたほどハト派的なものではなかった。景気減速懸念による投資家の株離れは続きNYダウは年初来安値を更新、株安を眺めて原油も売り込まれる展開となった。

 需給面においても上値を抑制されている。米国の原油在庫は3週連続で減少したものの、減少幅は市場予想を下回り、これによる影響は限定的だった。1月初旬に保有している在庫に基づいて課税されることから、税金関連の取り崩しの動きの可能性があり、需要増、供給減といった需給改善による在庫減少の動きの可能性は低い。足元の生産動向、先行きの生産見通しを勘案すると、年明け以降は再び在庫積み増しに転じる可能性も残る。米エネルギー情報局(EIA)の掘削生産性報告によれば、シェール主要7地区の12月の生産量は日量803万バレルと過去最高となる見通しが示されている。直近の在庫減少を好感するのはいささかリスクが高いと言わざるを得ない。また、12月のロシアの産油量も過去最高となる見通しだという。来年1月から石油輸出国機構(OPEC)加盟国およびロシアを含む非加盟国は協調減産に再度踏み切るが、冬季需要の盛んになるこれからの時期にロシアが減産を順守するか、懐疑的な見方も多い。