CASE02:わかりやすい「企業再生」の教科書

再生の命運はコア事業の強さ!

 このドラマは、フィクションでありながら、実際にあった話にきわめて近いこと。さらに、ドラマでありながら、M&A(企業の買収・合併)や企業再生の基本が自然と学べる「教科書」になっているのが、面白いところですね。

 第1話では「ハゲタカ」は、不良債権を元本の1割前後の安値で買いたたき、転売または回収することで利益を得ます。しかし、大手銀行に公的資金が入り、不良債権の処理が進み始めると、買って転売するだけで簡単に儲かるバルクセールは少なくなり、もっと手間をかけて儲ける手法が必要となってきます。

 それが、第2話で紹介される「バイアウト(企業買収)」。経営難に陥った企業の債権を安く買いたたくところまでは1話と同じですが、ハゲタカは、それをすぐ転売して儲けるのではなく、経営権をまるまる取得し企業を再生してからエグジット(売却)して、利益をあげることを目指します。

 第2話に出てくる『太陽ベッド』は、企業再生の教科書に出てきそうな、わかりやすい事例。2代目・中森社長(かたせ梨乃)の乱脈経営で赤字が続き、480億円の債務超過に陥りましたが、乱脈経営をやめればしっかり利益を出せると鷲津は見抜きます。

 この第2話を視て、カネボウの再生を思い出しました。価値の高い「化粧品事業」がありながら、繊維や化学事業の不振が続き、経営危機に陥った、日本が誇るべき老舗企業。再生のスポンサーに入った産業再生機構は、外資系ファンドで活躍した日本人の事業再生プロが、日本再生のために集結した、日本政府主導の純国産「再生ファンド」です。

 価値の高い化粧品事業をコアとして残しつつ、競争力の落ちた事業を同業他社に売却して、カネボウを再生に導きます。カネボウ化粧品は、最終的に花王が買い取りました。ドラマに登場する太陽ベッドも、高品質のベッド製造をささえる職人気質のガンコな工場長と、それを支える従業員がいるから、再生の道がきっと残っています。

 

解説:窪田 真之(くぼた まさゆき)
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト

 

「ハゲタカ」2話おさらい

 1話のバルクセールから4年後の2001年。鷲津政彦(綾野剛)は国内有数の寝具メーカー・『太陽ベッド』の債権を買い取る。オーナーの中森一族が経営する『太陽ベッド』は現在、創業者の娘である中森瑞恵(かたせ梨乃)が社長の座に。しかし経営者一族の浪費と乱脈経営は常軌を逸しており、債務超過は480億円にまで上っていた。

 鷲津は、債権を放棄する代わりに経営陣の撤退と民事再生法適用の申請を迫るが、『太陽ベッド』側は聞き入れない。なんとしてでも太陽ベッドをバイアウトしたいと考える鷲津は、社内の重要人物たちを探り出し、太陽ベッドの実情を徹底調査。オーナー一族の乱脈経営に加え、経営陣(三葉銀行からの天下り専務)の横領を暴く。鷲津は“ゴールデンパラシュート”を提示して、経営陣の仲間割れを誘うが…。

 

~トウシル編集部員の視聴後レビュー~ ハゲタカ「ココに注目」!

 パパから引き継いだ会社をダメにしちゃう二代目社長(かたせ梨乃)、銀行からの天下りで甘い汁を吸っている役員と、経営陣がみんな”ダメ”に描かれている太陽ベッド。中でもヘタレ感がハンパなかったのが三代目の伸彰(渡部豪太) 。社長室でゲーム三昧、働かずにお金がもらえるうまい話を疑いもせずホクホク喜ぶなど、「働きたくないでござる」を地で行くドラ息子っぷりがスゴイ(笑)。今のままじゃバイトも続かなさそうなこの子、この後どうなるんでしょうか。ハゲタカショックで心機一転、人生を再建してほしいものです。

▼バックナンバー

8/10Released! CASE01:日本初のバルクセール、その背景は!

8/17Released!  CASE02:再生できる企業を見抜くには!

8/20Released!  CASE03:暴かれた「隠し口座」は本当にあった?

8/21Released!  CASE04:敵対的買収に対抗する『ホワイトナイト』とは!

8/22Released!  CASE05:名門電機メーカーの凋落、悲しい日本の現実!

8/24Released!  CASE06:敵対的TOBは減少「表面は友好的に」が定番へ

8/31Released!  CASE07:後をたたない不祥事会見、企業倫理は「再生」できるか?

9/7Released!  CASE08:圧巻の最終回!次世代は鷲津が残した教訓を生かせるか?