日経平均は2万3,000円手前で、やや上値が重くなる

 先週の日経平均株価は、1週間で157円上昇し、2万2,851円となりました。米朝首脳会談が実施された12日、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が握手する姿が放映される中、日経平均は一時2万3,011円まで上昇しました。しかし、その後米金利上昇・米中貿易戦争エスカレートへの警戒から反落。

日経平均日足:2018年1月22日~6月15日

 

 今年の日経平均は、2月に、米金利上昇(3%に接近)を嫌気して急落。3月には、米中貿易戦争激化への不安からさらに下落しました。しかし4~5月に急反発。「米長期金利3%でも世界の株式市場にとって問題ではない」「貿易戦争は、落としどころを見つけて収束していく」といった楽観論が広がったことが背景です。

 ところが日経平均は、5月後半から6月にかけて、2万3,000円手前で、やや上値が重くなりつつあります。

 米金利上昇、米中貿易戦争の不安が、依然としてくすぶり続けていることが、影響しています。

 

米中貿易戦争の懸念が再び強まる。トランプ政権が対中制裁を7月6日から一部実施と発表

 トランプ政権は15日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の最終リストを発表しました。500億ドル(約5兆5,000億円)に相当する中国からの輸入品1,102品目に25%の関税を課す方針です。このうち340億ドル(約3兆7,400億円)に相当する818品目への関税は7月6日に発動するとしました。

 中国は米国がしかける貿易戦争に、応戦する方針です。16日に、同額・同規模の報復措置をとると表明しています。つまり、米国からの輸入500億ドルに、報復関税をかける方針です。

 この話は、今回、初めて出た話ではありません。5月22日にトランプ大統領が、中国の知的財産侵害に対し、制裁関税を課す検討を始めた当初から、始まっています。この時も中国は、同額・同規模の報復を行うと表明しています。この時、米中貿易戦争激化の不安で、米国および世界の株が大きく下がりました。

 その後、米中貿易戦争への不安は、やや緩和していました。米中両国の今後の交渉次第で、制裁関税の発動は避けられるのではないかとの、ムードも出つつありました。

 今回トランプ政権は、制裁の一部について、具体的な発動日を7月6日と定めました。これで、実際に発動される可能性がかなり高まったと言えます。ただし、ぎりぎりまで、制裁実施回避のための交渉は続くと考えられます。

 制裁を課す対象金額について、トランプ大統領は、3月22日時点では、600億ドル相当(約6兆6,000億円)としていました。今回は、500億ドルとしています。具体的な制裁品目を決めるに当たり、米国の産業界の反対を受けて、制裁対象から外れた品目があった分、金額が低下しました。

 中国は、同額の報復をすると言っており、3月22日時点では、600億ドル相当としていましたが、今回は、500億ドル相当としています。

 

米FRBは13日市場予想通り利上げ実施。短期的に利上げ加速を示唆したが、利上げ打ち止めも徐々に視野に入りつつある

 米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は13日、FF金利の誘導目標を1.50~1.75%(中心1.625%)から1.75~2.00%(中心1.875%)へ引き上げました。

米FF金利の推移:2000年12月~2018年6月

出所:楽天証券経済研究所が作成

 利上げ自体は予想通りで、サプライズ(驚き)はありません。市場の注目点は利上げの有無ではなく、今後の追加利上げのペースに移っていました。「利上げ加速の見通し」が出るか、「利上げに打ち止め感」が出るか、そこが注目点でした。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバー予測(中央値)で、2018年末のFF金利見通しが引き上げられました。その結果、FOMCメンバーは、2018年に4回の利上げを予測していることとなりました。3月の予測では、2018年に3回という予測でした。4回に引き上げられたことで、FRBが利上げ加速を示唆したとの見方が広がりました。

FOMCメンバーによるFF金利の予想(中央値)

出所:米FRB

 一方で、米利上げの打ち止めが視野に入りつつあるとの見方もあります。それは、以下3つの理由によります。

1.FOMCメンバーの見通しは割れている

 3月時点では、2018年に3回の利上げが予測されていました。6月の予測では、4回に引き上げられました。ただし、それは、たった1人の理事が、意見を変えた結果です。3月時点で、2018年の利上げ回数の見通し3回と4回は、ほぼ拮抗していました。僅差で3回が優勢でした。

 6月になっても、意見は拮抗しています。たった1人の理事が意見を変えたことで、僅差で4回が優勢となりました。

2.FOMCメンバーによる、FF金利の長期見通しは、2.375%に据え置かれている

 2018年末に、もし予測通りFF金利が2.375%まで上がれば、長期的な見通しに近づきます。それは、長期的には利上げ打ち止めの見方になります。

3.米金利上昇の副作用として、新興国から資金が流出し、米国に集まる流れが続いている

 米ドル・米国株は堅調ですが、米利上げを受けて、低信用国の通貨が大きく下がっています。米金利上昇の副作用として、低信用国の通貨・国債がさらに売られるようだと、「新興国危機」が意識されるリスクもあります。そうなると、米FRBも利上げを続けられなくなる可能性もあります。

 日経平均は、米中貿易戦争と、米金利上昇の不安が残るので、目先、上値が重くなると考えています。ただし、今のところ景気・企業業績は堅調と言えますので、下がったところでは、国内投資家の買いが増えると考えられます。当面、日経平均は大きくは上下とも動きにくいと考えられます。

 

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