リスクは来年の消費税率引き上げだが、ビジネスモデルを評価

 この「タイムズ カー プラス」が牽引し、パーク24の2018年10月期(2018年度)の連結純利益は過去最高を更新する見通しです。パーク24の利益は、2008年度にはリーマンショック、2014年度には消費税率の上昇を受けて落ち込んだものの、その後は数年かけて最高利益を更新してきました(図4)。

 来年は、消費税率が引きあがれば消費者の外出マインド自体が落ち込みとみられるため、時間貸駐車場、カーシェアリングサービス双方にその影響を受ける可能性が高いでしょう。また、傘下となった英駐車場大手のナショナル・カー・パークスなど海外部門の、のれん償却後利益がすぐに拡大することも考えにくいです。しかし長期的な目線で見れば、カーシェアリング事業で首位の地位を確保し利益を拡大させているパーク24は成長企業と言えます。

図4 パーク24の連結業績推移

期間:04/10期~2018年10月期
出所:会社資料より楽天証券作成

 

長期的にはテクノロジーと融合してさらに進化

長期的な観点からは、パーク24とテクノロジーの融合について要注目です。筆者の推測ですが、テクノロジーとのシナジー効果は以下3点で発揮されるでしょう。

(1)ポイントプログラムによる顧客マーケティングの強化
(2)駐車場オーナーとドライバーをつなぐマッチングサービスの拡大
(3)トヨタ自動車と連携した乗り捨て型パーソナルモビリティの展開

(1)ポイントプログラムによる顧客マーケティングの強化

 パーク24では、駐車場、カーレンタル、カーシェアリング向けの無料の会員制サービス「タイムズクラブ」を展開しており、そこで発行される会員カードでポイントを貯めることができます。今後はそのポイントプログラムをさらに活用して、ドライバーに、同社の駐車場を選んでもらう導線を作る見込みです。

 その施策として考えられるのが、2018年2月に正式に誕生した、リアル店舗向けのクレジットカード決済サービス「タイムズペイ」です。同社の駐車場の周辺にあるリアル店舗への試験運用を経て、端末の提供が始まりました。この「タイムズペイ」で決済すると「タイムズクラブ」のポイントを獲得できるということになれば、「外出先での食事はポイントが貯められるあの店にしよう」と考えるドライバーが、店の近くにある「タイムズ」の駐車場を使うという流れが形成できます。「タイムズペイ」は、店舗側が負担するクレジットカード決済手数料が低いため、これまでクレジットカード決済端末の導入をためらっていた店舗にとっても魅力的なサービスとなっています。

 なお、「タイムズクラブ」カードの還元率は、「タイムズ駐車場」利用の場合、100円=1ポイントですが、年間(毎年10月1日~翌年9月30日)に1万5,000円以上を利用した場合、もしくは「タイムズ カー プラス」「マンスリータイムズ(月極駐車場)」を契約した場合、還元率が3倍になります。貯まったポイントは「タイムズチケット」などに交換できます。

(2)駐車場オーナーとドライバーをつなぐマッチングサービスの拡大

 パーク24は、「B-Times」というマッチングサービスも強化していく見込みです。
このマッチングサービスを広げることにより、同社にとっては「タイムズ」駐車場とし
て開発しづらいケースでも、同社の顧客ネットワークとつなげることができます。
このサービスでは、空いているスペースを有効活用したいオーナーと、外出先で確実に車
をとめたいドライバーをマッチングさせることができます。

 例えば、複数台の広さがある月極駐車場のうち、1台、2台だけ解約されてしまったケー
スで、ちょうどそのエリアに行くドライバー側が、駐車場を探すことなくスムースにとめ
たいと思っている場合に機能します。

(3)トヨタ自動車と連携した乗り捨て型パーソナルモビリティの展開

 同社はトヨタ自動車とカーシェアリングの事業で業務提携をすると公表しました。現在、トヨタ自動車との提携で明らかになっている業務提携の内容は、「TimesCarPlusX×Ha:mo」です。これによりパーク24は、トヨタのパーソナルモビリティであるHa:mo(ハーモ)を「タイムズカープラス」に配置することができるようになりました。Ha:mo(ハーモ)は一人乗り用の小型電気自動車で、かつ乗り捨てできることをコンセプトに設計されています。したがって、ハーモの利用可能数が拡大すれば、自転車シェアリングのような感覚で乗り物をシェアするという新しい体験をドライバーに提供することができます。

※パーソナルモビリティ:町中での利用を想定した一人から二人用の小型電動車

 さらに、こうしたカーシェアリングサービスで得られたデータは自動運転技術の開発にも寄与していくとみられます。同社はこれまで、カーシェアリングの自動車に自社開発したレコーダーを搭載することによって運転データを集めてきました。その設置台数は約2万台にも及び、かつドライバーの属性が多種多様であるため、次世代の自動車を開発するうえで貴重なビッグデータになると考えられます。