今日は、読者から質問の多い「株主優待銘柄の買いタイミング」について、解説します。

株主優待制度とは?

 日本には、世界でも珍しい「株主優待」という制度があります。上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度です。上場企業が株主に、お中元やお歳暮を贈るようなものです。

 株主には本来、配当金を支払うことで利益還元するのが筋です。ところが、日本の個人株主の一部に、お金(配当金)をもらう以上に、贈り物(株主優待)を喜ぶ傾向があることから、個人株主を増やしたい上場企業は積極的に優待を実施しています。魅力的な制度なので、積極的に活用したら良いと思います。

6月末に権利が確定する優待銘柄。権利付き最終売買日に買うのは「お得」?

6月26日(火)は「権利付き最終売買日」、27日(水)は「権利落ち日」

 2018年6月26日(火)は、2018年6月末基準の配当金や株主優待を受け取るための「権利付き最終売買日」です。6月26日に株を買うと、3営業日後の6月29日(金)に株主名簿に掲載されます。そうすると、6月末の株主に与えられる配当金や株主優待を得る権利が確定します。

 気をつけなければならないのは、6月27日(水)に買っても、6月末基準の配当金や株主優待を受け取る権利は得られないことです。6月27日のことを「権利落ち日」といいます。6月27日に株を買った場合、株主名簿に登載されるのは7月2日(月)。6月末にはまだ株主名簿に登載されていませんので、6月末基準の配当や株主優待は得られません。

<2018年6月末(6月の最終営業日:29日)が権利確定日の場合>

出所:楽天証券経済研究所が作成

株主優待が魅力的な6月中間決算銘柄を6月26日に買うのは、有利か?

 買ってすぐに6月末の株主優待や配当金を受け取る権利が確定するので「お得」に感じる人が多いようです。そのため、人気の優待銘柄では、権利付き最終売買日に向けて、権利取りの買いが増えます。

 ただし、現実には直前に買って「お得」になるとは限りません。かえって、損なこともあります。権利付き最終売買日の買いが「お得」か「損」かは、直前の株価の動きによって決まります。

 人気の優待銘柄は、権利付き最終売買日に向けて、権利取りの買いで大きく上昇することがあります。その場合、権利落ち日に株価が大きく下がる可能性が高くなります。配当金や株主優待を受ける権利が得られても、その価値以上に、株価が大きく下がっては意味がありません。権利取り直前に株価が大きく上がっている銘柄の買いは見送るべきです。

人気の優待銘柄は、権利落ちの1カ月以上前に買うのが良いことも

 人気の優待銘柄や有名な好配当利回り株には、権利落ち日の1~2カ月前から、権利取りの買いが入ることもあります。人気の高い銘柄ほど、早めに権利取りの買いで株価が上昇し、権利落ち日には、株価が大きく下がります。

 人気の優待銘柄や好配当利回り株は、権利取りの買いが入って株価が上がる前に投資した方が良いといえます。どれくらい前に買ったら良いでしょうか? 銘柄ごとに、もっとも良い買いタイミングは異なるので、一概には言えませんが、6月末基準の人気の優待株は、5月後半~6月初旬までに買った方が良いことが多いといえます。

 タイミングの判断は、個別銘柄ごとに異なります。人気の優待株に、一時的な悪材料が出て、権利取り直前に株価が大きく下がっているならば、そこは良い買い場になります。

優待狙いの買いで、権利取り直前に株価が大きく上がりやすい銘柄、5つの特色

 一般的に、以下5つの特色を備えた銘柄は、優待取りの買いで、権利取り直前に株価が大きく上がることがあります。

(1)株主優待や配当金を、年1回(本決算のとき)しか出さない。

(2)小型株。流動性が低い。

(3)優待利回りが高い(優待を金銭換算し、投資額で割って、算出する)

(4)使いやすい(誰もが必要とする日用品中心に幅広い選択肢がある)

(5)マネー誌などで、人気の優待注目銘柄として紹介されている

 このような銘柄に投資する場合は、権利つき最終売買日ではなく、その1~2カ月前に投資した方が良いといえます。

 

 

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