すかいらーくに株主優待狙いで投資するリスク

 気をつけなければならないのは、配当金や株主優待の内容は、突然変更されることもあることです。業績が悪化して配当金が減らされることも、株主優待が廃止されることもあります。そうなると、株価が下落するリスクも高まります。

 どんなに、株主優待が魅力的でも、最低限、業績動向は見ていなければなりません。

(1)営業利益は、2017年以降、伸び悩み

 すかいらーくは、2016年12月期に営業最高益(312億円)をあげましたが、2017月12月期の営業利益は、前期比10%減の281億円となりました。外食業すべての共通課題ですが、人手不足によって人件費が上昇していることが減益要因となっています。また、2017年12月期から、株主優待を突然3倍に増やしたことも、減益要因になっていると、会社側から説明がありました。

 今期(2018年12月期)の営業利益は、会社予想ベースですと、前期比2.1%増の287億円となります。売上高は前期比4%増の3,738億円と過去最高を更新する見込みですが、まだ利益の回復は鈍いままです。引き続き、人件費の上昇が圧迫要因になるほか、人手不足に対応した店舗運営効率化のためのシステム投資を増やすことが、コストアップ要因となります。

 外食業全般に、人手不足と人件費上昇の逆風が続きますが、すかいらーくグループは、バーミヤンなど特色ある店舗やコスト管理の徹底で、堅調な業績を維持していくと予想しています。

(2)株主優待の大盤振る舞いを、いつまで続けられるか?

 すかいらーくについて、もう1つ、重要なリスクを知っておく必要があります。株主優待の大盤振る舞いがいつまで続けられるか、現時点ではっきりしないことです。

 すかいらーくは、2017年2月9日に突然、株主優待を2017年から3倍に増やすと発表しました。100株保有する株主に、2016年までは年間2,000円の食事券を贈っていたのですが、それを、2017年から年間6,000円に変更したのです。

 優待券の大盤振る舞いを好感して、個人投資家の買いで株価は上昇しました。ところが、株価上昇後の3月、6月、11月と3回に分けて、筆頭株主のベインキャピタル【注】がすかいらーく株の売り出しを発表したのです。ベインは当時発行済み株式数の44%を保有していましたが、3回の売り出しですべて売り切りました。

【注】ベインキャピタルとすかいら-くの関係
すかいらーくは2011年にベインキャピタルの傘下に入り、経営再建し、2014年に東証一部に再上場しました。ベインは、上場直後に発行済み株式の70%を保有していましたが、2015年6月と2017年3月に売却し、保有比率を44%まで低下させていました。

 こうした経緯から、「大株主ベインにすかいらーく株を高値で売り抜けさせるため、優待の大盤振る舞いを発表したのではないか」と疑う声もあります。

 すかいらーくが、どういう意図で株主優待を3倍にしたか、確かなところはわかりません。株主に報いるとともに、株主にすかいらーく店舗のファンになってもらうことを、目的に現在の株主優待が長期的に維持されることを期待したいと思います。ただし、株主優待の内容は、いつでも変更される可能性があることは、頭に入れておく必要があります。

 なお、6月末日が中間決算をしめる日となるすかいらーくの6月末日基準の優待券・配当金を得るためには、6月26日(火)までに買う必要があります。6月26日に東京証券取引所で買い付けると、6月29日の株主名簿に登載されますので、6月末日の株主に贈られる株主優待と、配当金を得る権利が確定します。6月27日(水)は、「権利落ち日」といいます。27日に買っても、株主名簿に登載されるのは、7月2日(月)となりますので、6月末基準の株主優待を得ることはできません。

 

 

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