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2018年5月の『シンガポール・リート』市場は、米長期金利の上昇や米ドル高に伴うアジアからの資金流出懸念などが嫌気され、下落しました。ただし、過去1年の騰落率でみると、現地通貨ベースで+8.5%、円ベースで+10.2%と、パフォーマンスは堅調さを維持しています。今回は、アジアの経済成長の恩恵を受けて利益成長期待が高く、相対的な配当利回りの高さや財務の健全性が良好な『シンガポール・リート』に注目します。
【ポイント1】シンガポールのGDP成長率は上振れ
オフィス賃料は回復基調
シンガポール政府が5月24日に発表した、2018年1-3月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比年率+1.7%と、4月に発表された速報値(同+1.4%)から上方改定されました。政府はまた、2018年の成長率見通しを2.5~3.5%と、これまでの1.5~3.5%から上方修正しました。国内景気は、今後中国経済の減速に伴い緩やかに鈍化するものの、安定成長を続けるとみられます。
景気回復に伴いシンガポールのオフィス市況は底入れし、明確な回復基調にあります。大手不動産会社CBREによれば、2018年1-3月期の平均賃料は前年同期比+8.4%上昇し、2017年10-12月期の同+3.3%から賃料上昇率が加速しました。
【ポイント2】アジア成長の恩恵を受ける『シンガポール・リート』
海外への積極投資が特徴
アジア各国・地域は、⼒強い経済成⻑を背景に、「個⼈消費の拡⼤」や「都市化の進展」がみられ、「世界貿易の中⼼地域」としての存在感も⾼まっています。
『シンガポール・リート』市場は、海外の不動産に投資しているリートが多い点が特徴です。地理的な優位性から豊富な収益機会に恵まれ、アジアの経済成長の恩恵を受けることから利益成長期待が高いと考えられます。
【今後の展開】『シンガポール・リート』は堅調に推移しよう
また、『シンガポール・リート』市場の配当利回りは5.5%(S&P REIT指数、2018年4月末時点)と、世界のリート市場のなかで相対的に高い⽔準にあります。一方、『シンガポール・リート』の負債の⽐率は⽇⽶と⽐べて相対的に低い⽔準にあり、財務健全性が⾼いと⾔えます。
『シンガポール・リート』市場は、国内景気や不動産市況の回復とともに堅調な推移が期待されます。さらに、国内のみならず、アジアの成長を取り込むといった点でも『シンガポール・リート』の高い成長力が注⽬されると思われます。長期金利に上昇圧力がかかるなかでも、利益成長期待が高く、相対的な配当利回りの高さや健全な財務状況から『シンガポール・リート』 は選好されやすいとみられます。