高い収益性を発揮する埼玉地盤の食品スーパー

 大手2社が収益力を高めるため構造改革を実施する中、既に高い営業利益率を達成しているスーパーがあります。

 その代表が、埼玉県を基盤に主に食品スーパーを展開するヤオコー(8279)と、ベルク(9974)です。両社とも営業利益率は4%台と、SM業界の中では高水準です。

 この2社の共通点はベースが埼玉県であること。ここに好調のヒミツがありそうです。

 埼玉県の平均年収は他より相対的に高く、また、全国1位の平均年収を誇る東京都のベッドタウン的役割を果たしていることから、他県よりも消費環境は有利とみられます。

 さらに、両社の展開店舗数が100店舗台と比較的大規模な点も強みになっていると考えられます。

 図4の食品スーパーの既存店売上高の推移を見ると、消費税率が上昇して以降、店舗数が少ない企業は未だに落ち込みを回復できないでいるのに対し、51店舗以上を展開する企業はしっかりと推移している状況です。多数店舗を展開する体力のある企業が消費税率上昇による混乱を切り抜けていると考えられ、来年に再び消費税率が引き上げられれば、この差はさらに顕著になるでしょう。

図4 事業規模別食品スーパーマーケットの既存店売上高推移(前年同月比)

期間:2010年4月~2018年3月
出所:「販売統計調査」(統計・データでみるスーパーマーケット)より楽天証券が加工して作成

 

商品提案力が高いヤオコー

 ヤオコーは2018年3月期をもって29期連続で増収を達成し(単体ベース)、2019年3月期の当期純利益は最高益を更新する見込みです。

 同社の独自の強みは、高品質でバラエティーに富むお惣菜といった「商品提案力」にあると考えられます。

 そして、同社は消費者にセグメント別でアプローチしています。

 例えば、セグメントの一つである「テリョーリ型」は、家族のために手料理をする消費者で、2018年3月期は野菜の購入増をターゲットに、野菜の鮮度や品質を向上させる取り組みを行っています(図5)。

図5 ヤオコーの連結業績推移

株価:5,870円(2018/5/22)
単位:百万円、円
注:2016年3月期、2017年3月期の業績および売上高のポイントとなる指標は単体ベース
出所:会社資料より楽天証券作成

買い物の快適さを提供するベルク

 ベルクは2018年2月期に27期連続の増収を達成し、2019年3月期の当期純利益は最高益を更新する見通しです。

 同社の強みは、どの店舗も駐車場に入りやすく、店内は整然としていて、効率的に買い物ができる点です。また、真摯(しんし)にチェーンストア理論(※)を追求し、出店からマーケティング戦略に至るまで本部主導で動く一方、店舗側は店のオペレーションに集中する体制を築いています。店舗がオペレーションに集中できることで、清潔さや商品棚の効率的な管理ができていると言えるでしょう。店舗内の設備更新などにかける予算も確保し、顧客に対して、買い物の快適さを提供することを追求していると言えます(図6)。

図6 ベルクの連結業績推移

株価:5,850円(2018/5/22)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成

 長らく低迷が続いていたスーパーストア業界ですが、イオンは消費環境の変化に対応すべく大規模な構造改革を行い、長期的に復活の兆しが出ています。また、顧客満足度を追求し続けているヤオコーやベルクといった企業が、業界全体の回復基調を牽引するものと、期待されます。

※チェーンストア理論

米国で生まれた経営手法。企業活動を本部へ集中させて、店舗ではオペレーションに専念することで経営効率を上げることを狙う。日本でチェーンストア理論を実現している企業としてニトリ(9843)などが挙げられる。