今日は、読者から質問の多い、テクニカル分析の基礎について解説します。私がファンドマネージャー時代に重視していた、出来高(売買高)変化の読み方を解説します。同じ内容を、以下4つの動画でも、解説しています。動画で学びたい方は、以下URLからご視聴ください。

【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【1】
【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【2】
【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【3】
【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【4】
 

出来高は人気のバロメーター

 チャートを見る時、株価の動きだけでなく、出来高(売買高)の変化も見る必要があります。売買高の変化には、投資家の動きを知るための、重要な情報が含まれています。

 覚えていただきたいのは、「出来高は人気のバロメーター」であることです。一般的に、出来高が増加している時は人気上昇中で、出来高が減少している時は人気が低下しつつあります。それを考慮に入れた上で、チャートを見る必要があります。

 さて、それでは、さっそくクイズを解きながら、出来高の変化を読むトレーニングをしましょう。

 まず、クイズです。

<クイズ> 以下A社のチャート、売り・買い、どっち?

出所:筆者作成

 

100%当たるチャートシグナルはない

 こういうクイズを出すと、「チャートだけでは今後の株価はわかりません」とお答えになる方もいます。確かにその通りです。チャートに基づく投資判断は、100%当たるものではありません。

 ただし、チャートのパターンを見て、統計的に今後上がる可能性が高いか低いか判断することはできます。統計的に7割の確率で上昇するチャートのパターンがあれば、それは立派な買いシグナルです。ただし、それでも、3割の確率でシグナルが外れ、下落することもあるわけです。100%当たるチャートは存在しません。

 それを理解した上で、チャートのシグナルを見て売買するのは意味あることです。7割の確率で上昇するパターンが出たら買いを実行し、上昇すれば利益が得られます。もし外れて下がったら、さっさと損切りするだけです。同じパターンのチャートで勝負し続ければ、長期的には利益を稼ぐことができるはずです。

これだけは覚えておきましょう

 出来高は、一般的に人気のバロメーターです。

出来高が多い = 人気が高い
出来高が少ない = 人気が低い
     
出来高が増加 = 人気が高まりつつある
出来高が減少 = 人気がなくなりつつある

 上記には例外もありますが、後で解説します。

 安値圏で出来高が少なかった銘柄が、急に出来高が増えて上昇する時、「買いシグナル」が出ることがあります。なんらかの買い材料が出て、買い始めた人がいると考えられます。なんの材料かわからなくても、出来高の増加と株価の動きから、「何かいい話が出ている」と想像することができます。

 逆に、高値圏で大商い(出来高が多い)の銘柄が、徐々に出来高が減少していく場合には、売りシグナルが出ます。人気が離散し、下落が続く可能性が高まっていると判断できます。

クイズの答え

A社チャートの投資判断は「売り」

 株価チャートの勉強をしたことがある方は、これが「二番天井」という売りシグナルであることに、すぐ気づいたと思います。ただ、実際の売買では、二番天井だけで、自信を持って「売り」とは判断できません。ここから切り返して上昇していくことも、あります。

 ここで、出来高の変化も併せて見ると、売った方がいいと判断がつきます。「二番天井」「高値圏で出来高が急速に低下」と、良くない兆候が2つ重なっているからです。

 7月に出来高が増えて株価が急上昇した時、人気も上昇中でした。ところが、8月に株価が二番天井をつけた後、出来高が急速に少なくなっていることに注意が必要です。人気が急速になくなっていることがわかります。

 高値で買ってしまった投資家が売ろうとしても、指値の買いが少なくなっているので、売るのが難しくなりつつあります。

次のクイズです

<クイズ>以下のB社チャート、売り・買い、どっち?

出所:筆者作成

 

 B社チャートは、前のA社チャートの上下を逆さにしたものです。出来高の増減も反対になるように作ってあります。前のクイズのチャートでは、8月に入り、株価が高値から下がってくる中で、出来高が急速に減少していました。このチャートは逆で、8月に入って株価が安値から上昇してくる中で、出来高が急速に増加しています。何らかの好材料が出て、投資家が買い始めていると思われます。

 株価チャートの勉強をしたことがある方は、これが「二番底」という買いシグナルになっていることにも気づいたと思います。「二番底」だけでは、自信を持って買うことはできませんが、「二番底」「出来高急増」と良いシグナルが2つ重なっているので、ここは買い出動したいところです。

B社チャートの投資判断は「買い」

売りシグナルの出ているチャートを逆さにすれば、買いシグナルが出ているチャートとなります。

 

出来高増加が「人気上昇」と言えないケースも

 それでは、「出来高は人気のバロメーターの増加」の例外となるケースを見てみましょう。さっそく、クイズです。

<クイズ>以下のC社チャート、売り・買い、どっち?

出所:筆者作成

 出来高が増加する時、多くの場合、株価は上昇します。何らかの買い材料が出た時に、買い手が少しでもたくさんの株を買おうとして、上値に入っている指値売りを買っていくために出来高が増加しています。出来高増加=人気上昇と考えていいわけです。

 ところが、答えは

C社株の投資判断は「売り」

 C社は、株価が下落している時に、出来高が急増しています。何らかの悪材料をつかんだ誰かが、少しでもたくさんの株を売ろうとして、下値に入っている指値買い注文にぶつけて、売り約定していると考えられるからです。

 まとめると、出来高が上昇して株価が上昇しているときは「人気上昇」ですが、出来高が上昇して株価が下落しているときは「人気離散」の兆しと取るべきです。

 さらに多くのクイズを解いて、出来高変化のいろいろな読み方を学びたい方は、以下のURLから、動画をご覧ください。4本の動画の中に、チャートを読むクイズが全部で9問、出ています。

【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【1】
【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【2】
【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【3】
【動画で解説】クイズで学ぶ テクニカル指標 出来高変化を読む【4】

 

 

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