【おさらい】4~5月のドル/円

 4月のドル/円は政治要因によって動いた月でした。

 日米首脳会談を控えた月前半は107円前後でこう着。その日米首脳会談は4月18日に行われ、トランプ米大統領は二国間貿易交渉を強く望むと表明しましたが、日米貿易赤字問題については、為替への言及も含め強い要求がなかったことから、ドル/円への影響はありませんでした。

 その後は4月27日の南北首脳会談への期待から109円台に上昇しましたが、共同声明では非核化への具体的な道筋がなかったことから利食いの売りで押されました。しかし、米長期金利が3%近辺へ上昇したこともあり、結局4月は109円台前半で終えました。

 5月早々は、FOMC(米連邦公開市場委員会)と米雇用統計の2大イベントがありました。最近の米国物価の上昇を受けたFRB(米連邦準備制度理事会)のスタンスが注目されていましたが、5月2日のFOMC声明文では足元の物価情勢判断を引き上げ、6月利上げを示唆しました。

 しかし、利上げペースやインフレの見方について予想よりハト派であったことから、110円台定着には至りませんでした。

 5月4日に発表された4月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を下回り、賃金上昇も伸び悩んだことでドルは売られ、109円台前半に下落しました。

 

ドル/円110円にタッチ?米国主導の相場

 米国の保護主義の影響から、今年に入り110円割れ→105円割れへと進行していた円高の動きは、トランプ大統領の他国への貿易赤字削減要求が表面的には静まったことと、米朝首脳会談の可能性による朝鮮半島の地政学リスクが後退で、現在の110円方向へ戻したと言えそうです。

 もっとも単純な図式で見ると、110円割れ→105円割れの円高が、反動によって円安に戻っただけと言えるかもしれません。本来なら107~108円程度の戻りであったのが、朝鮮半島の地政学リスク後退という要因によって一段の円安を後押ししたようです。

 ただ、最近の北朝鮮の態度から、非核化への道筋が見えなくなった今、期待が先行し過ぎたのかもしれません。そこへ5月のFOMCと米雇用統計によって、インフレリスクがやや後退したため、110円台には一瞬触れただけで定着しなかったのだという構図が理解しやすいかもしれません。

 そして、米国の保護主義や米朝首脳会談への動きには、11月の米国中間選挙を見据えた動きということもマーケットは熟知しています。

 関税引き上げなどの保護主義的な政策は、大統領選の勝利をもたらした白人労働者層に公約の実現をアピールする狙いがあります。そして、白人保守層の多い「バイブル(聖書)ベルト」を中心に支持を固める狙いもあり、トランプ大統領は5月にも在イスラエル米大使館移転のセレモニー出席のためイスラエルを訪問したいという意向を示したり、イラン核合意の離脱を表明したりしています。

 米朝首脳会談では米国に飛ぶ可能性のあるミサイル開発を中止させたという成果と同様のことを狙っているのかもしれません。それでも中間選挙の下院は劣勢予測が多いそうです。