VIX指数変動は「結果」に過ぎない

 2月5日にボラティリティーを表すVIX指数が急騰したのは、そのような投資家の不安心理の「結果」であり、市場急落の「原因」ではありません。

 VIX指数は、いろいろな金融商品や投資ストラテジーと密接にリンクしています。その関係でVIX指数が動くと連鎖的にいろいろな投資対象が売られるのですが、これはそれらの商品やストラテジーの性格上、当然のことであり、都合の悪いときだけVIX指数を責めることはできません。実際、最近特に流行っていたインデックスファンドやETFなどの商品も、普段はマーケットの層を厚くし、流動性を補強する役割を果たしています。そのおかげでマーケットの変動はスムーズ化されてきました。

 ただ多くのストラテジーが「VIX指数が何パーセント動いたら、自動的に売る」という、ある種、ポートフォリオ保険的に設定されていたために、一定以上にVIX指数が動いたら、次々に「売り」がトリガーされ、結果としてボラティリティーを増幅してしまったというわけです。

 幸い、今回は1987年のような市場のメルトダウンは回避されました。今後、ボラティリティーは漸減してゆくと思います。普通、株式はボラティリティーが漸減する局面では買われやすいです。

教訓

 今回の下げの主因は10年債利回りの急激な上昇に求めることができます。すると今後も10年債利回りの動きには細心の注意を払う必要があるでしょう。これが再び2.8%を超えてくるようであれば、市場は再びギクシャクすると予想されます。

 先日の市場急落局面では幸い「株式を売り、債券へ避難する」という教科書通りの債券買いが入り、それが債券利回りの低下に寄与しました。マーケットが平常心を取り戻すキッカケになる動きでした。

 いま、米国経済はすこぶる好調で、アメリカはすでに完全雇用の状態に近いです。すると今後は賃金上昇プレッシャーがかかりやすいです。そのことは「景気の伸びしろ」が限られていることを示唆します。

 言い換えれば、これ以上の景気の刺激は、むしろマーケットにとってマイナスかもしれないのです。トランプ大統領は大型インフラストラクチャ投資計画をぶち上げていますが、それはこの文脈では逆効果かもしれないのです。