米国株高を受けて、一時2万4,000円台回復も、円高進行で週後半3日続落

先週の予測

 国内決算が本格化し、機関投資家が動きにくい中、為替の動きと米国の暫定予算の期限切れによる政府機関の一時閉鎖がどうなるのかに注目。閉鎖が長引けばドル売りとなって円高が進行し、1ドル=110円を切ると下値をさぐる展開も想定されると予想。ただし、基本的には2万3,500~2万4,000円のレンジの中での動きが基本としていました。

結果

 米国市場では週明けの1月22日(月)に暫定予算が合意されたことで3指標そろって最高値更新。これを受け23日(火)の日経平均は先物主導で+307円の2万4,124円と26年ぶりに2万4,000円台を回復しました。しかし、その後は日本銀行やECB(欧州中央銀行)の金融緩和からの出口への思惑や米国の政府要人の「円安は米国にとって悪いことだ」との発言もあり、急激な円高進行。一時108円台となり、日経平均は週後半は3日続落となり、2万3,631円で引けました。1日だけ2万4,000円台を回復したものの、基本的には2万3,500~2万4,000円のレンジの中での動きとなりました。海外投資家は、1月第2週に続き第3週(15~19日)も売り越しに。

 22日(月)は、110円台の円高が重しで、米国の暫定予算の採決をにらみ手控えとなって、もみあい+8円の2万3,816円と小幅続伸でした。23日(火)は、前日の米国市場で暫定予算が成立したことが好感され、3指標そろって最高値更新したことで、日経平均は先物主導で2万4,000円台を回復。終値は+307円の2万4,124円でした。1991年11月15日(終値2万4,099円)を更新する26年2カ月ぶりの高値水準となりました。この日の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定され、黒田総裁は「出口」については考えていないと発言しましたが、為替の円高阻止の効果はあまりありませんでした。

 24日(水)になると、前日の利益確定売りと円高が109円台に進行したことで、▲183円の2万3,940円と2万4,000円を切って引けました。25日(木)は、ダボス会議でムニューシン財務長官が「弱いドルは米国の貿易に有利」と発言したことを受け、一時108円台となったことで、日経平均は▲271円の2万3,669円の大幅続落となりました。週末の26日(金)は、前場は円高一服を支えに一時+128円の2万3,797円まで上昇するものの、その後はマイナス圏に転じ、▲77円の2万3,592円まで下げて、終値は▲37円の2万3,631円と3日続落となりました。

 26日(金)の米国市場は、総じて好調な決算や予想を上回る経済指標、さらにトランプ大統領がダボス会議でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への復帰を示唆したこともあり、3指標そろって大幅高の最高値更新となりました。シカゴの日経先物は+95円の2万3,725円でした。

 29(月)は、先週末の米国株式の3指標が最高値更新となったことで、+75円の2万3,707円と高寄りし、上げ幅を拡大して一時+155円の2万3,787円まで上昇。しかし、後場になると円が強含んだことや上海市場がマイナスになったことをきっかけに先物にまとまった売りが出て下げに転じマイナス圏入りとなりました。その後は昨日の終値をはさんだもみあいとなり、▲2円の2万3,629円と小幅な4日続落で引けました。4日続落の陰線となり、25日移動平均線(29日時点2万3,483円)が意識されています。

 

11月中間選挙に向け、ドル安誘導か日経平均は注意が必要

 トランプ大統領は、選挙期間中も当選後も米国は貿易で不利益を受けてきたと述べ、中国や日本に貿易是正を求めると発言してきました。これまでは北朝鮮問題で中国のサポートが必要だったため、貿易問題は棚上げにしてきています。

 しかし、今年は11月に中間選挙があり、今のところ経済の調子はいいもののトランプ大統領への反発は強いため、同時に共和党も人気が落ちています。その対策としても、ますます米国ファーストを明確にするために為替政策を通じて貿易赤字を減少させ、米国の経済をより強く見せたい思惑です。 先週、ティラーソン国務長官に続き、ムニューシン財務長官が「貿易などについてドル安になるのは明らかに米国のためになる」とドル安誘導の発言をしました。

 結果的に、1ドル=108.28円までドル安が進みました。 しかし、これに対してトランプ大統領は「ドルは今後強くなるだろう」とドル高発言をしています。大統領と官僚の発言が同じタイミングで出ているのに内容が矛盾していますが、これは政治的な駆け引きが行われているとみることができます。

 本来、トランプ大統領は貿易是正を公約の1つに挙げており、11月まではドル安誘導により、米国経済の成長をさらにアップさせて中間選挙で支持を得ることが目標といえます。ということは国務長官や財務長官のドル安発言は、11月までの短期の為替政策であり、トランプ大統領のドル高発言は、その後の長期政策だと思われます。このような考え方がトランプ政権のドル安誘導の裏側にあるということになります。そうだとすれば、円安を武器としたアベノミクス相場は、中間選挙を前にいったん大きな調整に転じる可能性もあります。輸出企業の為替レートは1ドル=110円水準ですので、円が110円を大きく下回ると業績上ブレ期待がなくなり、輸出企業にとっては厳しいものになります。

 為替は、経済の状況によって動くと思われがちですが、現実は「政治は常に経済を優先する」が一般的です。政治家は、落選すればただの人ですから、自分の立場を守るためには、経済を一時犠牲にすることはあっても政治を優先します。今回も、まずは政治を優先して「11月の中間選挙向けアピール」を行っていると思われます。 
 貿易にとってドル安はプラスでも、世界から米国債券を買ってもらって財政赤字を埋めている米国としては、ドル安が続いてドルの先安感があれば、米国債券は買われず、財政的に危機になるという側面があります。だからドル安誘導はあくまでも11月中間選挙向けであり、その後はドル高に誘導すればよいと考えているのでしょう。これまで日経平均は一方的に上昇してきただけに米国のドル安誘導には注意が必要となります。 

 もう1つ注意しておくこととして、米国の上院議会の発言に北朝鮮が核実験かミサイルを発射した場合、北朝鮮を攻撃するという意見もでてきており、専門家は70%の確率といっています。

 

今週は、為替が一服となれば、2万3,500~2万4,000円のレンジで、もみあいが続く

 今週は、先週末の米国市場で3指標そろって最高値更新したことから、為替の円高が一服していれば高く始まり2万3,500~2万4,000円のレンジの中で戻りを試す動きが想定されます。今週は決算発表が本格化するものの円高推移のままだと、上値は押されることになります。輸出企業の為替の想定レートは1ドル=110円水準なので、ドルがこの水準まで戻らなければ2万4,000円を突破するのは難しいと思われます。逆に円高が進行すれば25日移動平均線(1月29日時点2万3,483円)を切って下放れとなることも考えられます。

 そういう意味では、トランプ大統領の30日(火)の一般教書演説や、31日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明の中での利上げに関するコメントが注目されます。また、今週は週末の1月雇用統計を始め複数の経済指標の発表があるため様子見ムードも強く、基本は2万3,500~2万4,000円のレンジ内で、もみあいが続きそうです。