PERだけ見て、割安割高を判断することはできない

 PERだけ見て、割安・割高を判断するのは、適切ではありません。PERの問題をよく理解した上で、PERを見る必要があります。

 それを説明するために、まず、個別銘柄のPERを、具体例に見てみましょう。

<PERの低い銘柄群:2024年10月9日前引け時点>

出所:PERは、2024年10月15日(前引け)の株価を、今期会社予想1株当たり利益で割って計算。今期とはINPEXだけ2024年12月期、他は2025年3月期

<PERの高い銘柄群:2024年10月9日前引け時点>

出所:PERは、2024年10月15日(前引け)の株価を、今期会社予想1株当たり利益で割って計算。今期とはファストリは2024年8月期、MonotaRoは2024年12月期、他は2025年3月期

 上の表を見ると分かりますが、PERは、銘柄ごとにかなり開きがあります。トヨタ自動車のPERは9.6倍です。東証プライム市場の平均PER(加重平均)が、15.5倍であることを考えると、PERで見て、株価は割安と見えます。

 一方、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(4661)のPERは50.1倍です。東証プライムの平均と比較して、割高に見えます。

 ただし、PERを単純に比較して、割安割高を判断するのには問題があります。PERは、あくまでも、今期予想利益に対して、株価が何倍まで買われているか示しているだけです。

今期と同じ利益が、今後ずっと得られるわけではない

 今期と同じ利益が、これから毎年ずっと得られるならば、PERだけで割安割高を判断して問題ありません。ただし、現実には、今期と同じ利益が将来も続くわけではありません。将来の利益がどうなるか、増えていくのか減ってしまうのか? そのイメージによって、今期PERで高い水準まで株価が買われるか、低い水準に放置されるか、決まります。

 PERの低い銘柄群には、一般的に以下の特色があります。

(1)利益の成長性が低いと考えられている銘柄

(2)利益が不安定と思われている銘柄(景気敏感株など。景気が悪化すると業績が大幅に悪化する)

(3)特別利益(株や土地などの売却益など)によって、一時的に利益水準が高くなっている銘柄

 PERの高い銘柄群には、一般的に以下の特色があります。

(1)利益の成長性が高いと考えられている銘柄

(2)利益が安定的と思われている銘柄(ディフェンシブ株。景気悪化の影響が小さい)

(3)特別損失(不採算事業からの撤退損など)によって、一時的に利益水準が低くなっている銘柄

不当に低PERに放置されている銘柄は「買い」、過剰な期待で高PERに買われている銘柄は「売り」

 さて、PER何倍だったら、株価は割安と言えるのでしょうか? 一般的には、東証プライムの平均PER15.5倍より、低ければ割安、高ければ割高と言えます。

 ただし、そういう画一的な見方には問題があります。利益の成長性や安定性が考慮されていないからです。

「PER何倍なら割安」という問いへの私の答えは、以下の通りです。

  • PERだけでは、割安割高の判断はできない
  • 利益の成長性・安定性を総合的に考慮した上で、割安割高を判断すべき
  • 利益の成長性や安定性を考慮すると、PER10倍でも割高、PER40倍でも割安な銘柄もある

 PERが低いということは、株式市場の評価が低いことを意味します。ただし、中には、不当に低い評価を受けている銘柄もあります。私は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)INPEX(1605)三菱商事(8058)トヨタ自動車(7203)は、割安株として「買い」と判断しています。

 逆に、PERの高い銘柄で、株式市場の評価が高すぎる銘柄は、「売り」判断となります。

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