短期の逆風も長期見通しをより楽観、2025年には消費刺激策の効果顕現へ

現地コード 銘柄名
02020

安踏体育用品

(アンタ・スポーツ・プロダクツ)

株価 情報種類

86.85HKD
(9/30現在)

株価
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 BOCIは中国のスポーツウエア小売市場にとって、2024年7-9月期は厳しい四半期になると予想し、国内最大手の安踏体育用品のファンダメンタルズについても短期的に慎重見通しを維持している。ただ、販路リサーチの結果、同社の弾力的な戦略を、これまで以上に高く評価。最近の「Anta Superstore(超級安踏)」の開業に反映されるマルチフォーマット型の小売事業が、従来型販路と共食いすることなく、より多くの消費者を取り込む見通しを示した。ブランド別では、旗艦の「安踏」が短期的に同業他社を上回る半面、「FILA」をはじめとするハイエンドブランドに関しては、政策主導の消費市場の回復をもう少し待つ必要があるとの見方。目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 7-9月期の業績はそこそこの内容となる見込み。4-6月期には「安踏」ブランドの小売販売額が前年同期比1桁台後半、FILAが1桁台半ばの伸びだったが、BOCIは主力製品の投入やパリ五輪効果を理由に、続く7-9月期には小幅に加速するとみる。ブランド別では消費意欲の萎縮が響き、FILAの伸び悩みが続くとの見方。2024年通期の「安踏」と「FILA」の小売販売額について、それぞれ前年比約10%、1桁台半ばの伸びを見込む。

 BOCIは「Anta Superstore」の深セン大運天地店を訪問したが、この店舗は25-40歳の消費者や家族連れを主なターゲットとする旗艦ブランド「安踏」の新小売形態。機能性ウエアや、多様性、コスパ重視のアスレジャー(スポーツウエアを取り入れたファッション)製品を扱う。店舗デザインは従来型ストアと大きく異なり、ユニクロや仏デカトロンに、より近い形態となっている。同店舗はオープンから2カ月で月商100万元超えを達成しており、同社店舗の中でもトップクラスの成績。今後は他都市にも広げる計画で、まずは10店舗程度の出店を目指す。競合の李寧(02331)や米ナイキが依然として調整局面にある中、この新店舗の展開が安踏の市場シェアの拡大につながる見通しという。

 一方、中国政府が9月に新たな消費刺激策を打ち出したにもかかわらず、BOCIはスポーツウエアの売上高が10-12月期も低調に推移するとみる。ただ、政策効果としての消費マインドの改善や資産効果は、中高価格帯ブランド(FILA、デサント、コーロン)の追い風。前年同期実績が低い2025年下期には、こうした効果が鮮明になると予測している。

 BOCIは現時点で利益見通しを据え置いたが、中国政府が発表した景気刺激策を受け、2025年の業績に対し、より楽観的な見方に転じた。2025年予想PER(株価収益率)20倍を当てはめて目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 レーティング面の潜在リスク要因としては、小売価格の大幅値引きの可能性や、主力ブランドのセルスルー率(在庫販売率)の悪化、販促費などの予想外の増大、予想を上回るペースの店舗閉鎖などの可能性を挙げている。