今日は、読者から質問の多い「PERの見方」を解説します。

PERは、株価割安度をはかる最も代表的な指標である

 PER(株価収益率)は、「ピーイーアール」または「パー」と読みます。日本だけでなく、世界中の投資家が見る重要指標なので、PERの見方をきちんと理解しておくことは、株式投資をやる上で重要です。

 PERは以下のように計算します。

 PER=【株価】÷【1株当たり利益】

 株価を、1株当たり利益で割って計算します。言い換えると、PERは、「1株当たり利益の何倍まで株価が買われているか」を示しています。一般的に、倍率が高いほうが株価は「割高」、低い方が「割安」と判断されます。

PERは株式市場全体の値も計算できる

 PERは、以下の計算式からも、計算できます。

<PER別の計算方法>

 PER=【株式時価総額】÷【純利益】

 これは、先ほどの計算式と、同じ計算をしていることになります。

 なぜならば、

【株式時価総額】=【株価】×【発行済み株式総数】

【純利益】=【1株当たり利益】×【発行済み株式総数】

 この方法から、株式市場全体に対してPERを計算することもできます。

 例えば、東証プライム市場の平均PERは以下のように計算します。

 東証プライム市場のPER

=【東証プライム上場企業の株式時価総額】

÷【東証プライム上場企業の純利益合計額】

 世界の、主要株式市場の平均PERは、古今東西、おおむね10~20倍で推移しています。成長性が低いと見られている株式市場ではPER10倍を割れることもあり、成長性が高いと思われている市場では、PERが20倍を超えることもあります。

<主要国株式市場の予想PER:2024年10月9日時点>

出所:各種資料より楽天証券経済研究所が作成、米国はS&P500種指数、日本は東証プライム

「何年で元が取れるか」という考え方から、PER評価が出てきた

「PER10倍は、PER20倍より割安」といっても、どういう意味か、少し分かりにくいですね。そこが、分かるように説明します。

 PER10倍は、「もし毎年同じ純利益が得られるならば、10年で元が取れる」という意味です。株価が1,000円で、1株当たり利益が100円ならば、PERは10倍です。毎年100円の純利益を10年間得られれば、10年で1,000円の利益が得られます。投資元本(1,000円)と同額の利益を回収できるわけです。

 同様に、PER20倍は、「同じ利益を上げ続ければ、20年で元本を回収」という意味です。PER40倍は、「同じ利益を上げ続ければ、40年で元本を回収」という意味です。

 他の条件が同じならば、PER10倍が一番割安で、20倍が次に割安で、40倍が一番割高となります。

 以下【参考】は、PERという評価方法が出てきた背景をさらに詳しく知りたい方のみ、お読みください。

【参考】PERという評価が出てきた背景

 会社には、倒産リスクがあります。近年、上場企業の倒産はまれですが、昔は、もっとたくさん倒産がありました。「何年で元が取れるか」という評価は、いつ破綻するか分からないリスクの高いビジネスに投資する際に重要です。PERは、投資元本を回収するのに必要な年数の目安を示しているわけです。

 株式会社は、17世紀のオランダや英国で誕生しました。英国からインド、オランダから東南アジアなどに貿易船を出すのは、リスクが極めて高いビジネスでした。途中で、船が難破する、あるいは海賊に襲われると、投資したお金がゼロになることもあります。その代わり、無事、航海を終えると、莫大(ばくだい)な利益がもたらされました。

 そういうハイリスクのビジネスへの投資リスクを、たくさんの投資家で分担する仕組みが、株式会社だったのです。そのようなハイリスク投資で、貿易船が何回無事に帰ると投資元本が回収できるかは、投資のうまみを知るのに重要な指標でした。

 その延長線上に、現代の株式会社の評価もあります。従って、欧米では、PER何倍かで、株価の割安度をはかるのが、普通となっています。