日本株の上昇ドライバーとして、自社株買いの重要性高まる
日本株を見る、海外投資家の目が少しずつ変わってきていると感じています。二つ、重要な変化が起こりつつあり、そこが評価されていると思っています。
【1】日本にインフレが復活、インフレによって名目GDP(国内総生産)の成長率が高まる
【2】日本企業が株主への利益還元を重視するようになる。特に、自社株買いを積極化する期待がある。
今日は、上の【2】について解説します。
最近、以下のようなニュースが話題になっているのを、皆さまはご覧になっているかと思います。
【1】東京証券取引所が、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの上場企業に対して、株主価値の向上策の開示と実行を要請
【2】金融庁が、大手損害保険会社に、持ち合い株の売却を要請
PBR1倍割れ企業は、日本にたくさんありますが、海外にももちろんあります。財務内容に問題があり、構造的に収益が悪化している上場企業は、しばしばPBR1倍を割れます。
日本のPBR1倍割れ企業はちょっと様相が異なります。財務内容が良好で、収益も安定的なのに、PBR1倍を割れている企業がたくさんあることです。借金をほとんど返済してしまって、キャッシュフローも潤沢なのに、自社株買いなどによってROE(自己資本利益率)を引き上げるなどの努力をしてこなかったために、株価が割安に放置されている企業が多いということです。
米国の経営者ならば、ありとあらゆる手段を使って株価を上げようとします。ところが、日本企業の経営者には、その努力が不足していたということです。
財務が良好で、収益が安定的なのに、PBR1倍を割れている企業が、株価を上げようとするならば、自社株買いが最も効果的です。東証の要請を受けて、自社株買いを増やす企業が増える期待があります。
金融庁による持ち合い株の売却要請は、ガバナンス改善を狙うものですが、結果的に企業の保有キャッシュが増え、自社株買いの増加につながる可能性が高いと考えられます。
これからは、日本企業の株価上昇ドライバーとして、自社株買いがとても重要な時代になると思います。
ところで、自社株買いをするとなぜ、株価が上がるのでしょう。自社株買いの意味が日本では正しく理解されていません。今日は、自社株買いを解説します。以下が結論です。結論に書いてあることを、きちんと理解できればOKです。
【1】配当金より自社株買いの方が株主にとっての恩恵は大きい
【2】自社株買いは株主だけでなく、会社にもメリットがある。発行済み株式総数が減るので、その分、配当金の支払いが減少する
【3】発行済み株式総数の2%相当の自社株を買うと、発行済み株式総数が2%減るので、利益総額が変わらなくても、1株当たり利益が約2%増える。PER(株価収益率)評価が変わらなければ、株価が理論上約2%上昇する
上記3点を、きちんと理解できるように、以下で解説します。
企業が、自社株を買うのは、なぜ?
近年、自社株買いを発表する上場企業への投資家の注目が高まっています。自社株買いとは、文字通り、自社が発行している株を、買い戻すことです。具体的に言うと、「三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が三菱UFJFG株を買う」、「NTT(9432)がNTTの株を買う」のが、自社株買いです。
なんのために、そんなことをするのでしょうか? 最も重要な理由は、株主への利益配分を増やすことです。自社株買いは、利益配分の重要な手段なのです。
株主への利益配分を増やす方法として、主に二つあります。
【1】増配(ぞうはい):1株当たりの配当金を増やすこと
【2】自社株買い
増配も喜ばれますが、近年は、自社株買いがより高く評価される傾向があります。米国のハイテク企業では、株主への利益配分は自社買いのみで配当なしが多くなっています。