エヌビディア決算、次世代半導体量産遅れで株安・ドル安も

 今週は28日(日本時間29日未明)に米半導体大手エヌビディアの2024年5-7月期決算発表が控えています。増収増益予想ですが、次世代半導体の量産遅延の可能性が報道されており、市場はどのような説明がされるか注目しています。

 市場予想通りの決算内容でも、先行きの不安材料になるなら株は売られることが予想されます。米株式市場をけん引してきたエヌビディア株の動きは、日米の株式市場に影響を与える可能性もあります。株安となった場合は、ドル安円高に振れる可能性があります。

米雇用指標下振れなら大幅利下げ期待高まり、1ドル=140円のドル安円高も

 日米の経済指標では、29日発表の米新規失業保険申請件数、米2024年4-6月期GDP(国内総生産)改定値、30日の8月東京都区部CPI(消費者物価指数)、米7月PCE(個人消費支出)コアデフレーターが注目されます。9月17~18日のFOMCまでには、6日公表の8月米雇用統計、11日の8月米CPIが予定されています。

 経済指標の中では、パウエル議長が下振れリスクを警戒している雇用関連指標には特に注目したいです。

 米労働省が21日に米雇用統計の年次改定を発表しました。この改定で昨年4月~今年3月の1年間の非農業部門雇用者の増加数を81.8万人下方修正しました。

 下方修正幅は2009年以来の大きさでした。しかし、下方修正幅は事前予想では30万~100万人でしたが、100万人を下回ったことで、マーケットの反応は限定的でした。ただ、そもそも調査を巡る難しさがあるといわれており、この改定の評価は分かれているようです。

 今回の下方修正だと、1カ月当たり6.8万人下方修正されることになります。金融政策の判断の前提となる雇用者数の下方修正は、FRBが実体より金融引き締めを長引かせてしまったのではないか、利下げは後手に回ったのではないかとの懸念をくすぶらせています。

 今年4~7月分の増加数(4月10.8万人、5月21.6万人、6月17.9万人、7月11.4万人)の平均は15.4万人となっています。1月から3月分の平均は26.7万人(年次改定修正前)であるため、増加数は今年に入ってから鈍化傾向となっています。

 9月6日発表の8月米雇用統計で雇用者数の増加がさらに鈍化を示せば、大幅利下げの期待が高まる可能性があります。その場合、ドル/円は再び1ドル=140円を目指すかもしれません。

 円高要因として日銀の次の利上げ時期が注目されています。

 10月利上げ観測が高まってきていますが、電気代・ガス代の政府補助が8月分から再開されるため、物価の下押し圧力になった場合、日銀の利上げタイミングがずれる可能性がある点には留意する必要があります。

 特殊要因として物価基調は変わらないと判断するのかどうか注目です。

ECB利下げ期待高まれば、対ドルの円高要因に

 パウエル議長の講演後、ドル全面安となってユーロやポンドは上昇しました。講演後、ドル/円は1ドル=143円台の円高となりましたが、その後一時145円台の円安となりました。

 これはユーロやポンドの上昇によってユーロ/円やポンド/円が円安になったことが後押ししたのかもしれません。

 9月12日にはECB(欧州中央銀行)理事会があります。ラガルド総裁は7月の理事会後、利下げはデータ次第と述べていますが、ECB高官からはハト派発言も増えてきています。

 もし、市場の利下げ期待が高まるのなら、12日の数日前からユーロ安の動きも予想されるため、ドル/円の予想をする際にユーロ、ユーロ/円の動きにも注目する必要があります。

 12日のECB理事会で利下げとなった場合、ユーロは売られ、ユーロ円も売られることが予想されます。これまでのドル安・ユーロ高からドル安、ユーロ安となり、ドル/円の円高のブレーキとなっていたユーロ/円の円安要因が剥がれる可能性がある点には留意する必要がありそうです。