日経平均、ブラックマンデーの超えの暴落

 日経平均株価(225種)が5日に過去最大の下げを記録した翌6日に過去最大の上げという、まさにジェットコースターに乗っているような相場が続いています。まさか1987年のブラックマンデーの翌日に付けた下落幅を上回る暴落が起こるとは思いもよりませんでした。

 前回のコラムでお話しましたように、8月は、1971年8月15日のニクソンショック(金・ドル交換停止、10%の輸入課徴金)や1990年8月2日のイラクのクウェート侵攻、2007年8月9日のパリバショック(サブプライム住宅ローン問題)のように経済的、軍事的大事件が時々起こり、相場が大きく動くことがありましたが、今年は経済も金融も軍事も同時にかつ複合的に起こってしまいました。

 米国の景気後退懸念から米国株が下落し、日本株も下落したとの報道がされていますが、今回の円高や株安はそれだけが理由ではない点には留意する必要があります。

 今回の相場大変動の背景としては、タカ派に変心した日本銀行、ハト派にこれから変心しようとする米国のFRB(連邦準備制度理事会)、そうせざるを得ない米国の経済状況に加え、米大統領選の不透明、中東の地政学リスクの高まりが重なり、日経平均は8月に入ってからの3営業日で約7.600円の大暴落となりました。

日銀のタカ派姿勢への急転換、FRBのハト派対応遅れ懸念で相場崩れる

 今回の相場の大変動は7月31日の日米の金融会合の結果がきっかけになったと考えています。

 日銀が政府からの圧力に応えるかのように、予想外の7月利上げを行い、先行きに対しても植田和男総裁は0.50%の壁を意識せず、追加利上げの可能性もあるとの認識を示しました。

 一方、FRBはFOMC(連邦公開市場委員会)の声明でインフレリスクだけでなく雇用のリスクにも注意を払うと述べ、FRBのパウエル議長は記者会見で「9月に利下げが検討される可能性がある」と発言しました。

 しかし、8月1日(木)公表の米7月ISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数が46.8と前月より低下し、2日(金)の7月雇用統計は市場予想を下回り、失業率も4.3%と悪化しました。

 これにより米景気後退懸念が高まったことから、9月の利下げ開始は遅すぎるのではないかとの疑念が浮上しました。FRBは経済をオーバーキル(金融を引き締め過ぎること)してしまったのではという印象を市場に与え、7月に利下げを開始すべきだったのではないか、あるいは9月は0.50%の利下げもあり得るのではないかとの景気後退懸念が市場を覆い、米金利は急低下し株は下落、ドルは売られる動きとなりました。

 これまでの日銀の大規模緩和継続姿勢、その結果としての過度な円安、米国のソフトランディング(軟着陸)という株高の前提が、日銀のタカ派急変の驚きとFRBのハト派対応の出遅れ懸念によって一気に崩れてしまったのがこの1週間の出来事とみています。

 加えて、ブリンケン米国務長官が4日に*G7(先進7カ国)の外相に対して、イラン側の報復攻撃が早ければ24~48時間以内に始まる可能性があると伝えたと報じられたことが、より市場に緊張をもたらせたのではないかと考えています。相場環境が悪いときには、これらの情報は保有資産を売却し、現金化しようとする動きに拍車をかけることになるからです。

*G7…日本、米国、ドイツ、英国、カナダ、フランス、イタリアの7カ国

 また、米大統領選は、6月28日のテレビ討論会以来目まぐるしく情勢が変化してきたため、選挙の不透明感が高まったことも、これまで積み上げてきた保有資産の売却を進めたかもしれません。